デジタルカメラにフィールドスコープ(スポッティングスコープ)などを覗かせた、コリメート撮影システムのこと。双眼鏡を覗かせることもある。
現在のメインカメラ、EX-10を使った例としては、KOWAのスポッティングスコープを使ったものがある。
スコープ本体は、安い方のTSN-774で10万円超。接続パーツだけでも6万円(SST-8877、TSN-VA3、TSN-AR55、CLA-12)かかる。
コリメート方式の性格上、ここまでかけても得るものは……という気もするが、頑張れる人たちには頑張っていただきたい。
とりあえず手元には、本体価格が1/16ぐらいだったファミスコ60Sがある。それに見合ったコストで、デジスコシステムをでっち上げてみた。
デジファミスコとでも呼んでおく。
紆余曲折はあったが、最終的には以下のような構成になった。
ファミスコ60S(トミー) - Tアダプタ(ビクセン) - PLöSSL 40mm(SVBONY) - ステップダウンリング(ノーブランド) - スペーサ(ステップダウンリング群+ステップアップリング群)(RISE(UK)) - フィルタ・アダプタリング(ノーブランド) - EX-10(カシオ)
Tアダプタは、手持ちにあった36.4mm用のものの一部を使用。拡大撮影用カメラアダプタ、などともいう。
PLöSSL40mm(以下PL40mm)はアメリカンサイズのアイピース。アマゾンでも買えるが、eBayなら2000円しない。
ステップダウンリングは、アマゾンでは350円、eBayならモノは違うが半額。
ステップアップ/ダウンリング群は、18枚セットの一部。アマゾンで2000円ぐらい、eBayで1000円ぐらい。
アダプタリングは、非純正の58mmとした。これはeBayにしかない。for Olympus XZ-2と謳われている。
ざっくり価格で、PL40mmが1800円、ステップアップ・ダウンリング類が1200円、アダプタリングが600円。〆て3600円なり。
Tアダプタが「手持ち品」という反則技は使ったが、なんとか1/16で収まった。
収穫物は以下のとおり。
基本的に1600pxに縮小。トリミングしたものは、4000pxから1600px分を切り出している。
鳥はAF、それ以外ではMFでピントを合わせている。月クラスの明るさがあっても、AFではカッチリ合わない。
像の甘さ、色収差などが判るが、許容範囲としたい。昼間画像では、ピンボケ部で色滲みが目立つ。これはちょっと美しくない。
ケラレは無いものの周辺減光はある。原因は追えてない。ファミスコ本体か、Tアダプタ絡みか、瞳径・有効径の関係あたりか……ちなみにファミスコ側の瞳径は6mm、カメラレンズの有効径は、112mm(相当、であるが以降記載しない)のF2.5~F8で9.6mm~3mm。ためしに絞ってみたが、絞るほど酷くなってしまった。
M45は10秒露出。星の流れ方から、35mm換算(対角)で合成f=1200mm弱と計算できる。
華奢なカメラ三脚に長く軽い鏡筒。シャッタ振動が収まるまで4~5秒もかかり、そよ風でもブレてしまう。最も良い画像を選んだが、それでも揺らいでいる。
本システムでは、ファミスコ筒を最長-1cmあたりにすると、無限遠はカメラの∞近くで、30m先がもっとも近距離側でピントが合う。無限遠だけを撮る場合には、筒をやや短めにすれば、合焦範囲の中盤でピントがくるので安心感がある。
ファミスコ筒を目一杯伸ばせば、10m先にもピントが合うようになるが、遠方には合わなくなる。
デジスコ関連の情報を当たってみると、BORGおよびその周辺パーツを使ったものが一定のシェアを得ている模様。デジボーグなどという呼称もある。
ボーグ望遠鏡の出自については、星ナビの連載が詳しい。そのボーグの前身とされるのが、今回使ったトミー製「ファミスコ60S」になる。
おもちゃ扱いで星屋には見向きもされなかった本機だが、後の天ガの試用レポートでレンズの良さが話題になっていた。
デジファミスコの仕様としては、テレコンでは届かない、かつ実用的な、合成f=1000mm程度を目指した。ちなみに2014年のダイヤモンド富士は1400mmクラス、2015年は900mmクラスで撮っている。
ファミスコはf=400mm、EX-10の最望遠は112mmなので、9倍、44mmの接眼レンズが必要になる。市販品では40mmが定番で手ごろなので、これで合成f=1120mmとした。前述のとおり実測では1200mm弱となった。
なお、多くのデジスコシステムでは正立像だが、光学的にも経済的にも無駄なので、気づかなかったことにした。
ファミスコの接眼部は、T2マウント(42mm、0.75mmピッチ、オス。以下M42P0.75Mと表記)のネジが切ってある。
手持ちにビクセンの36.4mm拡大撮影アダプタ(36.4mm Tアダプター)があったので、それを流用した。
このアダプタは、以下のA~Dのリングから構成されている。
リング名 | 望遠鏡側 | カメラ側 |
---|---|---|
A | M36.4P1.0M | アリガタ |
B | 止めネジ3本 | M42P0.75M(T2マウント) |
C | M42P0.75F | アリガタ(24.5mmアイピース挿入可) |
D | 止めネジ1本 | M42P0.75M(T2マウント) |
デジファミスコでは、CおよびDリングを使う。
ビクセンの現行商品での調達を考えると、接眼アダプター42T-31.7ADSX(Vixen/Amazon)で31.7mm用のCリング相当、拡大撮影カメラアダプター(Vixen/Amazon)でDリング相当、あたりになりそう。
T2ネジは一般的なので、BORGパーツや国際光器あたりを探しても揃うかもしれない。
CリングとDリングは、ネジ1本(+アリ型)で接続している。そこそこ長い筒と、重いEX-10を支えるには力不足で、すぐにガタつきが出てしまう。
対策として、ファミスコもカメラもワンプレートに乗せる形とした。冒頭写真では、板の上にファミスコもカメラも乗っているが、その板。@15の床板材に穴を開けるなどし、中央にW1/4のナットを埋め込んである。
C-Dリング間は、本来はカメラだけ回転させられる機構なのだが、致し方ない。ビクセン現行商品であれば、固定ネジは3本なので、これだけで持たせられるかもしれない。
アイピースは40mmを使うと決めたが、市場はアメリカンサイズ一辺倒。コストを考えたら、この時流に乗るしかない。eBayで、SVBONYのPL40mmを購入した。
このアイピースは、視野を外れた光がゴーストとなって現れることがあった。アイピース自体の問題かCリングとの絡みなのかは検証していない。
Cリングは24.5mm用、アイピースは31.7mm。どうやっても装着できないが、Dリング内には収まる。
あれこれ考えた結果、厚手の両面テープを15mmほどに切って二重に重ね、それをアイピースの3方(120°間隔)に貼り付けて、Dリングにスポッと嵌め込むこととした。この手の両面テープは発泡樹脂製で弾力性があるので、互いに押し合って上手いことセンタリングと固定ができる。
ただし、直接貼り付けてしまうと後で剥がせない。マスキングテープなどを貼り、その上に施工し、さらにマスキングテープを貼ることで、着脱可能化と装着時のスムーズ化を図っている。
このアイピースは、アマゾンの写真のように本体が3分割できる。レンズは滑り止めゴムが付いた部分にだけ入っているので、VP30でサブミリ精度でスペーサを作成し、Dリングに収めてみた。
あとはカメラをつなげば完成……のはずだったがピントが出なかった。
ファミスコは、最短状態から8cmはスコッと伸び、その先3cmがヘリコイドでピント合わせができる。Cリングに、そのままの状態のアイピースをぶつけて、ようやくピントが出た。それでも最長状態から-1cmとギリギリ。
現行のビクセンの接眼アダプタは大ぶりなので、これなら普通に接続すれば問題ないと思われる。ハレースコープ60Sの販売元でもあるので、合ってくれないと困る。
ピントは出たが、アイピースも飛び出てしまった。Dリングの後ろに、その分のスペーサが必要。
探してみると、M42エクステンションチューブなる物を発見。42mmということは、アイピースの後にも前でも入れられる。3種類の長さがセットになっている。これは好都合。
早速eBayで2ドルぐらいで落としたのだが、これは使えなかった。M42P0.75ではなく、M42P1.0だった。Pマウントなどとも呼ぶらしい。
Tマウントを謳う延長筒はなぜか高い。ヘリコイド機能付きなんてものもあるが、複雑化すれば故障も増える。そこで思いついたのが、フィルタリングセット。そこそこ安く、いずれ何かしらフィルタを使う際にも使えそう。
RISE(UK)ブランドを冠した18枚セットを購入してみたところ、ステップアップリングで約4.2mm、ステップダウンリングで約3.2mm、4組分で29.6mmほど稼げることがわかった。
今回は無調整でケラレも無く接続ができたが、このやり方では7.4mm単位での増減となる。ただし4段分でリングは8枚もあり、ネジ部は2mm程度ある。各々に1mm弱のスペーサをかますなどすれば、ほぼ自由に設定はできそう。
今回はカメラ側から、ステップアップリング群、ステップダウンリング群、の順で接続した。写真のように、中太りになっている。
逆にステップダウン、ステップアップの順も考えられる。見た目も、くびれて格好いいかもしれない。試してみたが、一番細い箇所にアイピースが通らなかった。
この中太りのリング群は、58mm-62mm、62mm-67mm、67mm-72mm、72mm-77mmのステップアップ、および逆のステップダウンリングを使用している。カメラのアダプタが58mmなので、そこから一旦77mmまで太り、58mmまで痩せ戻り、58mm-42mmのステップダウンリングを経由して、Tアダプタ・Dリングに接続する。
EX-10にコンバージョンレンズやフィルタをつけるには、専用のアダプタが必要になる。撮像モジュールはオリンパスXZ-2と同じなので、それ用のCLA-12がそのまま使える。
純正品のフィルタ径は55mmだが、58mmや52mmのものも市場には存在する。大は小を兼ねるのでは、などと考えているところに「フィルタ界では52mmや58mmの方が一般的」という意見も聞いた。結局、eBayにあった58mmタイプを購入した。
このアダプタは、カメラ側がM46.5P0.75Mとなっている。46.5mmというのは特殊だが、フィルタ径には46mmというものもある。ネット上には、メーカによって、ロットによって、46mmリングが使えることがあるような記述も見受けられる。
コンマ5mmも違えばネジ山を舐めてしまいそう。厚手のアルミテープあたりをネジの3箇所ぐらいに貼ってやればピッタリ嵌りそうな気がするのだが、そんなレポートは見当たらない。
このリングに、18枚セットなどを組み合わせてやれば、eBayでしか買えない特殊アダプタや、純正の高価なアダプタを使わずに、システムを構築できるかもしれない。
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