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砂利屋、舗装屋、ラブホ……
と、浜ホト・常光製作所
ノーベル賞のカミオカンデなどでお馴染み、浜松ホトニクスが、凄いカメラを開発したらしい。うんと低ノイズなので、光子をひとつひとつ数えられるという。


プレスリリース: 究極の低ノイズ性能で高画素数
世界初、2次元光子数識別計測を実現した科学計測用カメラを開発
5月20日から販売開始
PDF版


このカメラは「ORCA-Quest qCMOSカメラ C15550-20UP」という。
低ノイズ回路の設計技術、高精度な冷却技術、独自の信号処理により、画素間のバラつきを抑え、光子ひとつ分よりノイズを抑えることに成功。光子数計測を面画像として行える、世界初の科学計測用カメラ。
4096×2304px、940万画素。初年度150台、3年後には年間500台の販売を見込む。価格は517万円。
日経記事によれば、常光製作所で製造し、将来は先日着工の第5棟で増産をする予定。


画素数は4Kをカバーしている。ただし、9.4Mpxに対し読出し速度は47Mpx/sしかないので毎秒5枚。2K FHD部分読み出し、のようなことが可能だったとしても20fps程度。動画用途には難しそう。

ピクセルサイズは一辺4.6μm。フルサイズ機であれば40M画素程度に相当する。たとえば高感度を狙うソニーα7SⅢはあたりは12Mピクセル、8.1μmぐらい(素子サイズと総画素数から計算)あるので、面積にすれば3倍も違う。
画素が大きければ高感度、といわれるが、そもそもこのカメラはノイズが無いに等しいわけで、うんとゲインを上げられる(ハズ)。溜められる電荷量に不足が無ければ、低ノイズ化が実は高感度化であるともいえる(のかな)。
参考までに、かつてのハイエンドコンデジEX-10は、1/1.7型で12Mピクセル、一辺1.8μm、3.3μm2。ソニー機とは20倍も違う。

ちなみに1ルクスはおよそ、m2あたり毎秒4×1015個の光子が降ることをいうらしい。本件のカメラは1画素が21.16μm2なので、1ルクス下で1秒露出すれば85000個もの光子が捉えられる。光子ひとつを検出できるなら、月明かり(0.25ルクス)での陰が1/20000s露出で判る計算。




5/30追記。

浜松ホトニクスのトップページから、製品情報→カメラ→qCMOSカメラ、と辿ると、当該カメラがリストアップされる。
C15550-20UPのページには、プレスリリースより詳しい「カタログ (3.5MB PDF)」という日本語解説pdfがあり、さらに詳しい「Technical note (2.7MB PDF)」へのリンクもある。ただし、後者は英語版。

これらによれば、Standard scanという通常読み出しであれば、4K 120fpsでの出力が可能らしい。さすが500万円のカメラ。
5fpsというのは、Ultra quiet scanという読み出し方法で、特に低ノイズ化に配慮した動作モード、ということのよう。うんと低ノイズなので、観測値としてポアソン分布が見えてしまうのだとか。
そもそも、光電子の確率分布、とかいわれてもサッパリだが、ともかく理論で唱えられている現象が目に見えるのは多分すごいことだ。ポアソン分布については、このページが解りやすい。

露光時間は最大30分。2x2や4x4のビニングもできる。出力は8/12/16bitのいずれか。
動作温度は、0℃~40℃とある。冬季の使用時には保温が必要なんだろうか。

冷却も必要だとある。ペルチェ素子が内蔵されており、水冷、空冷いずれでも使うことができる。最大限能力を発揮するには、水温20℃の水冷の必要がある。
データ転送には、専用ボードが必要。最終的にはPCで、付属のソフトを使って取り込むと思われるが、日本語版PDFではそこに「データ解析装置」として品番も打ってある。

周辺の準備にも、結構な額がかかりそう……天文雑誌での人柱記事に期待しよう。

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