「ミヤマニガクマ(仮)」とは、昨年6月に岐阜県神坂峠で見出した個体のこと。
ニガイチゴ(Rubus microphyllus)とクマイチゴ(R. crataegifolius)の両方の影響がありそうだが、その近辺はおおむねミヤマニガイチゴ(R. subcrataegifolius)の領域。ミヤマニガイチゴの雑種報告も見られないため、ニガクマイチゴ(R. × nigakuma)に倣って、仮の名としてミヤマニガクマイチゴとしたもの。
4枚の写真はすべて、2016年6月5日の神坂峠でのもの。草刈りされた広場の隅に生え、日あたりは悪くない。このコンビは、停めた車の真後ろにいた。
生育地での第一印象は、軟弱なクマイチゴ。格好は間違いなくクマイチゴなのに、毛も斑模様もなく、棘も少なめでおとなしい。
栽培、観察してみた。
この個体は、ニガイチゴのように茎に白い粉を吹くことはない。黄緑色の茎で生え、徐々に色が着いてきて、年を越すころには赤褐色になる。
ミヤマニガイチゴは白く吹くことが多い。半分ニガイチゴの入ったヒメカジイチゴ(R. × medius)も多少は吹く。
葉裏は、白っぽいといえば白っぽいかもしれない、というレベル。たいして白くないヒメカジイチゴよりも白くない。手持ちのミヤマニガイチゴも、あまり白くはない。
花自体はニガイチゴに似るが、着き方はクマイチゴ様。幼果は、緩めながら萼を閉じる。
完熟果の粒の形状は、クマイチゴっぽく尖るものもある。一方で完熟(2)のように、まったく尖らないものもある。自生地近隣に生えていた、ミヤマモミジイチゴ(R. pseudoacer)にも似る。
熟した実が少なく、その構成する粒もまた少なかったので、萼の動きや粒の形状に影響しているかもしれない。
左の画像は、平凡社の写真図鑑、「日本の野生植物 木本」のミヤマニガイチゴのページ。左から上高地、乗鞍高原での撮影とのこと。
株も環境も違うとはいえ、それにしても違い過ぎないだろうか。果実の方は、よく見るミヤマニガイチゴそのもの。しかし花の写真は、ここで取り上げたミヤマニガクマ(仮)に近い気がする。フィールドで両者を見つけても、同種とは判断できなさそう。
逆に、ミヤマニガイチゴの変異の幅が相当に大きいのかもしれない。
粉を吹かないのも範疇、クマイチゴっぽい形状も範疇、となると、さんざん熱を入れて観察したこの個体も「ミヤマニガイチゴでした、ざんねーん!!」という可能性も……
【 和名、学名の出典等について 】
- 標準和名や学名は、基本的に「YList」ページを採用する。
- Ylistに掲載のないものは、 Wikipediaの「キイチゴ属」ページのものを使う。これには「※」を付す。
- 交雑種は、種レベルの扱いがあり特に著名と判断したものはそれを使う。それ以外は独自名を付す。和名は両親から「イチゴ」を取った合成名、学名は両親を「×」でつないで連名とする。いずれも母体を先頭にする。
- 例:カジイチゴ(R. trifidus)を母体にコジキイチゴ(R. sumatranus)の花粉を付けたもの → カジコジキ(R. trifidus × R. sumatranus)
- 雑種は、入手個体を「F1」とみなす。特に必要がなければ「F1」とは記載しない。その子は「F2」となる。たとえばファールゴールドの実生は、「ラズベリー・ファールゴールドF2」と記す。
- 同種が複数株ある場合は、和名の後に番号を付す。従前1株だったものは、それを#1とする。
0 件のコメント:
コメントを投稿
.