■ ニガクマの子はニガクマか
2016年、島田で見出し、2017年播種したニガクマイチゴ(Rubus × nigakuma)。
昨夏の段階では微妙な感じだったのだが、見るからにニガイチゴ(R. microphyllus)になっている。新しい枝は白く粉を吹き、葉裏もそこそこ白い。
来年の若実をもって確定したいところだが、もう「ニガクマの子はニガ」としてもよさそう。
ちなみに、カジイチゴ(R. trifidus)との雑種、ヒメカジイチゴ(R. × medius)の子もニガイチゴに戻ってしまう。ニガイチゴは1代しか混ざらないのか。
■ ヒメクマイチゴの結果
今年のヒメクマイチゴ(R. × geraniifolius)は10花以上咲いたのだが、結局ひとつも実らなかった。
クマイチゴ(R. crataegifolius)の血が入っているせいか、日なたに置いても耐えてくれる。ただ、葉は傷んでおり、熱帯夜が終わった頃から急にシュートを伸ばし始めたりしてきたので、やはり暑かったのだと思う。
片方の親であるミヤマモミジイチゴ(R. pseudoacer)にいたっては、遮光下に置いたものの夏が越せなかった。
■ ビロードイチゴらの交雑種
ビロードイチゴ(R. corchorifolius)とは、モミジイチゴ(R. palmatus)、カジイチゴを相手に試している。
ビロードイチゴにモミジイチゴの花粉をつけたビロードモミジは、当年発芽した。……と思ったのだが、2鉢播いたそれぞれは、片や自家受粉、片や鳥の土産、という結末に終わった。
前述記事にある写真は、土産からのカジイチゴとクサイチゴ(R. hirsutus)の実生コラボ、ということになる。
通常、播種後の鉢は、腰水にして網戸を被せておくのだが、このときは場所がなく木陰に置いて潅水していた。ヒヨあたりが落としていったのだろう。
あらためて今年、ビロードモミジを試しているが、まだ発芽は無い。
カジビロードは、昨夏やや調子を落としたものの、復活。しかしまた、盛夏のころには葉が傷みはじめた。
午前から午後の早めの時間までは直射の場所。これもまたヒメクマ同様、熱帯夜が終わる頃から息を吹き返したように見えるので、夜間の気温も重要なのかもしれない。
花は見られなかったが、来春はなんとかなりそう。
全体に毛ぼったいビロードの雰囲気と、赤い腺毛のカジイチゴのそれとを両方持っている。
ただ、なぜか複葉。勢いが出れば、7複葉までいきそう。カジ×クサのトヨラクサイチゴ(R. × toyorensis)にも似てなくもないが……まさか、そんなことは。
■ ハスノハイチゴ系
ハスノハイチゴ(R. peltatus)は、まずは生らせるところからというレベルだったのだが、他家受粉でこれはクリアできた。ただこの黒井沢株は、昨冬力尽きた。
忘れ形見でもある実生は、播種当年に1株、翌年にはうん10という数の発芽をみた。発芽率はかなりいい。
ところが結局、残ったのは初年度の1株と今年出た大量の中の1株のみ。過湿? 高温? ナメクジ? 病気? 木陰で腰水、でダメではどうにもならない。
3時方向の大きいのが2年生。
モミジイチゴとの交配も行った。
モミジイチゴは先陣を切って3月に、ハスノハイチゴは4月下旬に咲く。ひと月保存するのは無理そうなので、モミジイチゴの花は秋葉山第二駐車場あたりから採取してきた。
ハスノハモミジは111粒採種でき、今年になってパラパラと発芽を見た。現在は1株の小苗と1株の矮小奇形株(白い矢印)が残っている。
発芽率は1割~2割といったところ。生えたと思っても、しばらくするとそのままの格好で褐変したり、跡形もなくなったり。
普通の実生も生存率が悪いので、何が悪いのかは判らない。少なくとも、発芽率は明らかに悪い。
ハスノハ実生の2年生は、盾着こそしてないものの、全体にふっくらした輪郭でハスノハイチゴらしい雰囲気がある。全体に緑色で、赤味は無い。
一方のハスノハモミジ。こちらはシャープに二等辺三角形っぽい。主脈と側脈がはっきりし、側脈を避けて裂が入る。芽の部分は赤みが強く、モミジイチゴの幼葉に似ている。ちゃんと血が入ったかな、という感じがする。
1時方向、「矢印」の先の株は、非常に小さい。無菌培養でもしているかのよう。腰水をやめても同じ姿のまま、枯れもせず育ちもせず。
カジモミジ#3(R. trifidus × R. palmatus)のように、極端に小ぶりな株が出たこともある。交雑というイレギュラーな現象下では、遺伝的におかしいが生き残ってしまう、そんなパターンも稀にあるのかもしれない。
【 和名、学名の出典等について 】
- 標準和名や学名は、基本的に「YList」ページを採用する。
- Ylistに掲載のないものは、 Wikipediaの「キイチゴ属」ページのものを使う。これには「※」を付す。
- 交雑種は、種レベルの扱いがあり特に著名と判断したものはそれを使う。それ以外は独自名を付す。和名は両親から「イチゴ」を取った合成名、学名は両親を「×」でつないで連名とする。いずれも母体を先頭にする。
- 例:カジイチゴ(R. trifidus)を母体にコジキイチゴ(R. sumatranus)の花粉を付けたもの → カジコジキ(R. trifidus × R. sumatranus)
- 雑種は、入手個体を「F1」とみなす。特に必要がなければ「F1」とは記載しない。その子は「F2」となる。たとえばファールゴールドの実生は、「ラズベリー・ファールゴールドF2」と記す。
- 同種が複数株ある場合は、和名の後に番号を付す。従前1株だったものは、それを#1とする。
0 件のコメント:
コメントを投稿
.