2011年に黒井沢で出会い、仲間入りしたハスノハイチゴ(Rubus peltatus)。葉焼けでボロボロになったりしつつも生きながらえてきた。
花はいくらかは着くが、ごく僅かな粒が受粉する程度で、まともに生ることはなかった。
キイチゴは、種によっては自家不和合性を持つ。これもそうかと、2016年に神坂峠から伴侶を連れてきた。そのまま自然に任せてみたが、どうも芳しくない。
オーミネ希望などのコメントもあったので、ついでに別株の花での受粉作業もしてみた。その結果がこの写真。
5日には手前が、8日には後ろのデカいのが落果。落ちてしまうので、完熟で採るタイミングは難しい。
前者は行方不明。デカい方も、鉢置き場を構築するコンクリートブロックの穴の中に落ちており、拾い上げるのに難儀した。間もないと思われる早朝に拾ったが、すでにナメクジが食いついていた。
受粉作業は、雌蕊が育たなかった花をちぎって、別株に直接花粉をつける方法で行った。
雌蕊側の花は、花弁は落ち、柱頭先端が褐色がかってきた状態。整然と揃っていて、毛が生えているよう。受精しないとそのまま枯れ落ちる。
受粉作業をして数日経つと、揃っていた「毛」が俄かにわしゃわしゃしだす。さらに後には、粒々が育っているのが見えてくる。
粒が大きくなると全体も伸びてくる。そして、よく見かける、あの長~いヘンテコリンな形状に変化する。この時点では粒々は不透明。
最終段階で粒がもうひと膨らみし、透明感が出て、柄を残してヘタから落果する。
自然に任せておいても、まれにまばらに受粉する。ただし、1果に数粒、といった程度。自家不和合性の高い種(もしくは株)の自家受粉の結果、と想像する。
モミジイチゴ(R. palmatus)(秋葉山で採取)をかけたハスノハモミジは、そこそこ受精している。受粉時、あまりに大量のため雄蕊を残したまま施術した。自家不和合性があれば問題ないだろう、と考えたためでもある。
唯一の収穫、冒頭写真の奥側のデカい実。長さは4cmに届かない程度。拡大すると、結構毛深いのが判る。
すでにナメクジが貼りついていたが、種だけ残してきれいに食べていた。
柄を残してヘタごと落ちるが、その断面はあまりきれいではない。離層を作る秋の落葉などとは、機構が違うのかもしれない。
カットしてみると、果托はしっかりしている。やや繊維質で少し酸味がある。果托だけ真っ赤に成長したナワシロイチゴ(R. parvifolius)も、こんな味がする。
果肉はとてもジューシー。甘酸っぱく美味。自生種のキイチゴと、追熟前のキウイフルーツをかけたような香りもする。橙の種が透ける、ほのかに緑がかった半透明の果肉も美しい。
果肉を取り除く際の身離れはよい。キッチンタオルで処理したが、果汁が多いのでもっと吸水性のよいシートがほしい。
最後の画像は、果肉を取り去って一度すすいだ状態。ごく一般的なキイチゴの種の形状をしている。
1果で228粒あった。モミジイチゴの3倍、タネが小さく大量なクサイチゴ(R. hirsutus)と同じぐらいの数。
自生地ではクマバチなどがよく集っている。なんとか呼び寄せて、自然受粉させ、ボコボコに生らせてわしわし食えたら幸せだろうなぁ……
【 和名、学名の出典等について 】
- 標準和名や学名は、基本的に「YList」ページを採用する。
- Ylistに掲載のないものは、 Wikipediaの「キイチゴ属」ページのものを使う。これには「※」を付す。
- 交雑種は、種レベルの扱いがあり特に著名と判断したものはそれを使う。それ以外は独自名を付す。和名は両親から「イチゴ」を取った合成名、学名は両親を「×」でつないで連名とする。いずれも母体を先頭にする。
- 例:カジイチゴ(R. trifidus)を母体にコジキイチゴ(R. sumatranus)の花粉を付けたもの → カジコジキ(R. trifidus × R. sumatranus)
- 雑種は、入手個体を「F1」とみなす。特に必要がなければ「F1」とは記載しない。その子は「F2」となる。たとえばファールゴールドの実生は、「ラズベリー・ファールゴールドF2」と記す。
- 同種が複数株ある場合は、和名の後に番号を付す。従前1株だったものは、それを#1とする。
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