記録的な猛暑続き、18号の豊橋上陸から立て続けの台風、いつのまにか朝晩は寒い今日この頃。そんななかでも、キイチゴたちの営みは続く。
フユイチゴ類は熟し始めた。
6月には蕾が見え始め、7月には開花し始めた。
12日にオオフユイチゴ(Rubus pseudosieboldii)、14日にミヤマフユイチゴ(R. hakonensis)、21日に下草フユイチゴ(R. buergeri)とつづく。
ミヤマフユイチゴとフユイチゴは、とてもよく似る。オオフユイチゴは、花の雰囲気だけでもだいぶ違う。
結花枝の出方も異なる。オオフユイチゴは、多くのキイチゴ同様前年枝から結花枝を伸ばすが、ほか2者は新たなシュートを地面から出す。
オオフユイチゴは、花は二桁近く咲いたものの、結実はしなかった。フユイチゴ、ミヤマフユイチゴは、立派とは言い難いながらも着実に実を結んでいる。
フユイチゴは、一株の頃はまったく結実しなかった。別株を持ってきたところ、普通に生るようになった。フユイチゴもオオフユイチゴも、自家不和合性があると思われる。
一株で生ったミヤマフユイチゴについては、その性質がないのか、フユイチゴに非常に近いため交雑したのか、判断はできない。後者のような気はする。
7月29日には、ミヤマニガイチゴ(R. subcrataegifolius)がまた咲いた。
冬芽が吹き、春に咲き、夏に生り、新たなシュートを地面から出していたが、その新しいシュートの先で咲いた。
去年も似たような開花があり、暑い地に持って来られた影響か何かかと思ったが、2年続くと種の性質と考えたくもなる。
数えるほどの少数が、代わる代わる9月中まで咲き続けた。結実はない。
クスノキの半木陰に置いているが、葉縁が巻き込むように反り、現在は一部が枯れている。日差しが厳しかったか。
夏がきつかったせいか、クロイチゴ(R. mesogaeus)の葉があらかた落ちてしまった。暑すぎる気はしたが、自生地が非常に日当たりのいい場所だったので、遮光無しの炎天下に置いている。
他のキイチゴも多かれ少なかれ傷み、エビガライチゴ(R. phoenicolasius)は少し黄ばんできているが、落葉までするのは、これとハスノハイチゴ(R. peltatus)ぐらい。
もっとも、暑さが落ち着いてきた9月後半からは、その枯れ枝から新しい芽を吹き、今はものすごい勢いで伸ばしている。1mを超え、あるものは鉢に戻って発根し、あるものは鉢を超えて鉢置き台の下へ潜っていった。
エビガライチゴも似たような性質で、全体もより大柄だが、いま伸びているものの最大で80cm程度。
葉が落ちる前の7月から8月にかけて、今年枝の先端に咲き、実を着けた。自生地はミヤマニガイチゴと同じ。環境変化の可能性があるんだろうか。
どうも暑さにからきし弱そうなハスノハイチゴ。昨年は葉が枯れるばかりでなく、今年枝まで枯れこんでしまった。
今年はクスノキの下で、朝方のみ日が当たるようにしている。今頃の季節になると日が低くなるので、昼間も多少当たっている。
日が当たらなくても暑さが堪えたのか、大きな葉は落ちてしまった。ただ、今年は枯れ込みはない。冬芽も育っている。来年はいけるはず。
これよりやや日当たりのいい場所のミヤマニガイチゴも、前述の通り葉が傷んだ模様。
同様に、太陽が苦手っぽいコジキイチゴ(R. sumatranus)も、同じ場所に置いている。こちらは痛む様子はなく、丈は小柄ながら気分はよさそう。
自生地で突然消えたり、水をやっても肥料をやっても突然死する原因は、太陽なのかもしれない。
ちなみに、結果枝の挿し木は、着いたものの季節はずれに咲くなどしつつ、結局枯れてしまった。
8月後半には、ラズベリー系に秋花が着きはじめた。9月中旬には収穫が始まる。
ラズベリー(R. idaeus ssp. idaeus)も多少遮光したほうが調子がいいようで、昼前には蔭る程度のクスノキ遮光をしている。
インディアンサマーはかなりの豊作。去年もそうで、この株の性格なのかもしれない。ファールゴールドもやや遅れつつ、控えめに後を追っている。
ピークは過ぎたが、今もまだ生り続けている。
春先に挿したキミノニガイチゴ(R. microphyllus f. miyakei)は、3本中2本が着いた。
4月21日、シュート先端部を約30cm採取。手でも折り取れそうな柔らかさだった。
帰宅までに少し萎れてしまったので、水に浸ける。1~2時間経っても吸えてなさそうだったので、3分して挿し穂に整え全身を浸漬。3~4時間ほど後にはしゃんとしたので、葉は水から出しておく。
25日、赤玉土で団子挿し。
写真はその1ヵ月半後。左下から、先端穂、中間穂、基部穂。先端穂はほとんど枯れてしまっている。他は動きが見えない。7月中旬になって、ようやく脇芽が出てきた。
現在、先端穂は枯死、中間穂は50cm超、基部穂は25cmほどに育った。中間穂は、8号鉢に植え替えてある。
結果枝も挿してみたが、こちらはあっさりと枯れた。
播種も行った。
キイチゴなどは採り播きが基本、といわれる。以前、種子の洗浄・乾燥を行ったまま、晩秋まで播けなかったことがあった。それを播いたところ、まもなくカジイチゴやコジキイチゴの一部などが発芽し、そのまま越冬。翌春には、残りの各種ほとんどが問題なく発芽した。
播いた種の違いはあるものの、その後の採り播き経験より成績がよかった感覚がある。確認も兼ね、6月採種10月播種としてみた。
播いたのは、キミノニガイチゴ、カジナワシロ(R. trifidus × R. parvifolius)F1、カジモミジ#1(R. trifidus × R. palmatus)F2。キミノニガイチゴは黄実は遺伝するか、カジナワシロは雑種化が可能か、カジモミジは雑種の子の行く末の如何、の確認のため。
トヨラクサイチゴ(R. × toyorensis)(カジクサ or クサカジ)は雑種の子も雑種だが、コジキカジ(R. sumatranus × R. trifidus)やヒメカジイチゴ(R. × medius)(カジニガ or ニガカジ)は、それぞれコジキイチゴ、ニガイチゴが復元する。復元してないのかもしれないが、外観からは原種そのものにしか見えない形状の子が生まれる。理由は解らない。
トヨラクサイチゴだけが特殊で安定しているため、牧野図鑑にも載ったのかもしれない。
【 和名、学名の出典等について 】
- 標準和名や学名は、基本的に「YList」ページを採用する。
- Ylistに掲載のないものは、 Wikipediaの「キイチゴ属」ページのものを使う。これには「※」を付す。
- 交雑種は、種レベルの扱いがあり特に著名と判断したものはそれを使う。それ以外は独自名を付す。和名は両親から「イチゴ」を取った合成名、学名は両親を「×」でつないで連名とする。いずれも母体を先頭にする。
- 例:カジイチゴ(R. trifidus)を母体にコジキイチゴ(R. sumatranus)の花粉を付けたもの → カジコジキ(R. trifidus × R. sumatranus)
- 雑種は、入手個体を「F1」とみなす。特に必要がなければ「F1」とは記載しない。その子は「F2」となる。たとえばファールゴールドの実生は、「ラズベリー・ファールゴールドF2」と記す。
- 同種が複数株ある場合は、和名の後に番号を付す。
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