分布は静岡県以西とされる。浜松には、遠州灘からシラビソ帯まであるのだが、生えているのは見たことがない。
ネットで調べると、大井川下流域には県RDBに載る程度にはあるらしい(PDF)。航空写真などで見当をつけて、川沿いや山中を彷徨ってみたが、発見できなかった。
ならばと西方に目を向けてみたが、豊橋、新城、設楽あたりにも無い。オオフユイチゴ(R. pseudosieboldii)が繁茂する、だいぶ温暖そうな田原(渥美半島)にも無かった。
ハスノハイチゴ(R. peltatus)を探しにいった中津川(恵那山)もダメ。標高を下げてより西へと、豊田の猿投山まで足を延ばしてみるも空振り。
下手な鉄砲では埒が明かないので、あらためてネット情報をおさらいしてみた。
冒頭画像は、Googleマップの航空写真に、ネット情報などを書き込んだもの。どうやら瀬戸、多治見、土岐……以西にはあるらしい。
赤で囲んだところが、分布情報のある地域および箇所。赤の×印は、最終的に生えていないことを確認した場所。
画像範囲でのビロードイチゴの分布は、恵那山から尾張旭に至る山並みの北側以西、ということのよう。画像の右上角から左辺中央に至る、緑地帯がその山並み。
情報を元に瀬戸へ向かう。R248東側(上半田川)は、間違いないだろうと踏んでいた。
往路道中のR420に生えてないことも確認する。愛知県道33号も見たかったが、見て歩ける雰囲気ではなかった。
現地を歩き始めると、さっそく派手に茂ったコジキイチゴ(R. sumatranus)が迎えてくれた。
ニガイチゴ(R. microphyllus)やウスノキの赤も目立つ。ナワシロイチゴ(R. parvifolius)はかなり実入りがよく、クマイチゴ(R. crataegifolius)にも少し似ることを知る。
クサイチゴ(R. hirsutus)、クマイチゴ、モミジイチゴ(R. palmatus)と、いつもの面々は居る。が、求めるそれには出会えなかった。
追い討ちをかけるように、雨も本降りになってきた。
まだいくらか時間があったので、もう少し西の定光寺へ。道に迷いつつ、車を停められるところを探しつつ。いつのまにか定光寺公園へ到着。バス停脇に停める。
公園の一部らしい左手の山は、整備の手が入ったばかりのよう。せっかく来たので、一応チェックはしておく。……と、すぐそこに居た。
全体に毛が生えて白ぼったく、先端は赤茶けて緑も映えない。花も実も無く、なんとも冴えないその姿。しかし、あばたもえくぼ。
さらに先には、小ぶりながらひと群落を形成していた。頂に置かれたベンチの脇には、コジキイチゴもたっぷり実る。棘だらけなそれを生やしておくとは、管理者は解る人らしい。
さて、見つけたはいいが困った。公園内であり、管理者は「解っている」っぽい。
状況から、挿し穂をもらうぐらいなら影響は無いと思われたが、他をあたることにした。
あらためて見回すと、けっこう雑草のごとく生えている。家の裏、自販機の横、埋立地の脇……で刈り取られた個体、などなど。
山手の攪乱地の自生では、人の背を超える勢い。毛深く、3裂の葉で、立ち性。そしてランダムな大量の棘。浜松でのクマイチゴ軍団を見ているような気がした。ちなみにここには、クマイチゴは居なかった。
ビロードイチゴは、モミジイチゴにも劣らない美味と聞く。ひと月前は、どれほどの楽園だったんだろう……
ビロードイチゴ探し他各所探索で、見つけたものを記しておく。
クサイチゴ、ニガイチゴ、モミジイチゴ、クマイチゴ、ナワシロイチゴ、フユイチゴ(R. buergeri)あたりは、どこでもよく見かける。クサイチゴは低地や街中、ナワシロイチゴは水辺、フユイチゴは低山の半日陰、クマイチゴは強めの攪乱OK、など傾向の違いは多少はある。
島田市、童子沢親水公園の奥では、ニガクマイチゴ(R. × nigakuma)らしきものを見た。
葉の形状はクマイチゴながら毛が生えてない。棘はまばらで、クマイチゴのような「ランダムに大量」とは異なる。幹は、黒っぽい斑点も無いが、ニガイチゴのような粉吹きも見られない。葉裏も白くない。若実の萼は中途半端に閉じる。蕾、花、熟果は未見。
また標高400mでエビガライチゴ(R. phoenicolasius)を見つけた。浜松では倍くらい高度が必要。
恵那市、阿岳の南では、800mを超えたあたりで、エビガライチゴとバライチゴ(R. illecebrosus)があった。
中津川市、黒井沢でも、1000m付近からバライチゴが茂ってくる。恵那山登山口付近にはハスノハイチゴ(R. peltatus)も多い。
恵那山北側の神坂峠方面では、1200m超えたあたりからハスノハイチゴが見られる。大きめの群落もあり、迫力満点。1200m半ばからはバライチゴも。
1400m台では、ミヤマモミジイチゴ(R. pseudoacer)を見る。その近隣では、ニガクマイチゴらしき個体も。花実は無かったが、姿は島田でのものに似る。そうであれば、標高的にはミヤマニガイチゴ(R. subcrataegifolius)との交雑、ということになりそう。
ただ、判断しづらい個体も多く、ミヤマニガイチゴがニガイチゴとは別種、というのは微妙な感じがしている。
【 和名、学名の出典等について 】
- 標準和名や学名は、基本的に「YList」ページを採用する。
- Ylistに掲載のないものは、 Wikipediaの「キイチゴ属」ページのものを使う。これには「※」を付す。
- 交雑種は、種レベルの扱いがあり特に著名と判断したものはそれを使う。それ以外は独自名を付す。和名は両親から「イチゴ」を取った合成名、学名は両親を「×」でつないで連名とする。いずれも母体を先頭にする。
- 例:カジイチゴ(R. trifidus)を母体にコジキイチゴ(R. sumatranus)の花粉を付けたもの → カジコジキ(R. trifidus × R. sumatranus)
- 雑種は、入手個体を「F1」とみなす。特に必要がなければ「F1」とは記載しない。その子は「F2」となる。たとえばファールゴールドの実生は、「ラズベリー・ファールゴールドF2」と記す。
- 同種が複数株ある場合は、和名の後に番号を付す。従前1株だったものは、それを#1とする。
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