ざっと60、70といった数の鉢があるのだが、3鉢水をやってメクラに叩けば5匹は潰せるほどに、ヤブ蚊の大群も住み着いている。
虫除けスプレーは必携。ただ、毎朝のことでもあるので安くあげたい。快適性も重視したい。
使用は短時間なので薄くていい。濃すぎればべたつくし、プラスチックが溶けるので散水ノズルに指紋が着く。
一般的な虫除けミストは、隙なく吹くと減りが早い。エアゾールは、そもそもの単価が高い。ジェルはめんどくさいし、商品選択肢も限られる。
なんやかんやで、ミストを適度に吹いて適宜塗り伸ばす方法に落ち着いてはいるものの、なんとかならんかとも思っていた。
最近は濃厚な製品も出ている。山に分け入るときには、地形図や磁石と同じくらい重要なアイテム。一般向けの3倍濃度で2倍のお値段。
……ということはつまり、一時の用には一般品以下まで薄めれば、かなり安く上がるのではないか。薄ければ、ベタつきも減るのではないか。単価が下がれば、吹けのいいスプレーボトルでたっぷり使うことができ、いちいち塗り伸ばさなくて済むのではないか。
そんな思いつきから、最終的にはディート5%溶液が1.2Lで1000円、という形になった。
現在、日本で市販されている高濃度カテゴリでは、「ディート30%」「イカリジン15%」の2タイプがある。
医薬部外品であり子供にも使える、ということでイカリジンが勢力を伸ばしつつあるものの、まだまだディートが幅を利かす。
対応する害虫もディートの方が多いので、どちらか選ぶなら前者を推したい。ここではディート30%製品を使う。普段使い向けの3倍濃度になる。
メジャーなところでは、アース製薬の「サラテクトミスト リッチリッチ30」および、フマキラーの「スキンベープミスト プレミアム」がある。いずれも200ml入りのミスト製品。
実店舗ではどちらも1000円弱するが、楽天のケンコーコムでは600円前後とだいぶ安い。3500円以上まとめ買いするならオススメ。
もっとも、アマゾンのスピードに慣れていると、「あれ? 発送……まだ?」と心配になるかもしれないが。
これらは第2類医薬品に分類されており、薬剤師でなくても売れるクスリの中での最高ランク。
どちらもトニックっぽい香料が使われている。嗅ぐと、ベープは香料が来るが、サラテクトはまずアルコール臭が来る。製品全般的に、フマキラーは香りが強めな印象。
香り控えめの方が判断材料は増えるだろうと考えたこと、また微妙に安かったこともあって、今回はサラテクトを使用した。実店舗では、ベープの方が入手性がいいかもしれない。
希釈溶媒にはエタノールを使う。
じつは以前、水で薄めて試したことがあった。Wikipediaなどにもあるとおり、ディートは水に溶けにくい。あからさまに分離してしまい、シェイクしてすぐ吹いても均一に塗れている感がなかった。
ディートを薄めるには、エタノールは必須。
呑めるエタノールは、酒税がかかって高い。
無水エタノールなどは1000円を超える。無水でないものでも1000円前後するが、飲めない消毒用になると300円台で買えるようになる。消毒用でもアルコール分は80%前後あるので、いかに税金が高いか。
330円という店もあったが、上記店舗で「消毒用エタノール IK(500ml)」が中盤で買えたのでコレを採用した。
消毒用エタノールにも種類がある。
この製品は、第3類医薬品に分類されている。エタノール約80%と、精製水、そして課税回避(飲用不可)のためにイソプロピルアルコールが添加されている。
医薬品を謳ってないものは、組成がまったく記載されてないもの、ヒアルロン酸Naなどが添加されたものなど様々。要らぬ心配をしたくなければ、値段も変わらない医薬品が安心できそう。
間違って買うことはないだろうが、「局方」「試薬」などと書かれたエタノールは、値段が何倍にも跳ね上がる。
もうひとつの溶媒として水も使う。
水道水でも構わないが、器具洗浄などにも使える精製水にした。そのへんの実店舗でも、医薬品の500mlボトルが100円前後で買える。コンタクト用、などとあるものはもう少し安い。飲用の2Lだと、200円ちょっとなのでもっと安い。
「森永 やさしい赤ちゃんの水」や「ピジョン ピュアウォーター」がそれ。純水と書かれているが、メーカより精製水との言質を得ている。
虫除け剤200mlが600円、消毒用エタノール500mlが350円、精製水500mlが50円。〆て1000円。
希釈に関しては、実験もしてみた。
前述の通り、水だけでは分離してしまう。エタノールをある程度混ぜれば、完全溶解する。そのへんの頃合を測ってみる。
まずはざっくりと。
虫除けを試験管に一定量取り分け、水や消毒用エタノール(消エタ)を加えてみる。
水を入れるだけでは分離してしまう。が、多少は溶け合い、いくらかの嵩増しが可能なよう。
エタノール投入なら問題なく溶ける。両者投入の場合は、等量ずつぐらいの比であれば混ざってくれるらしい。
傾向がわかったので、もう少し詳しく量ってみる。
虫除け1mlに、消毒用エタノールを、0ml、1ml、2ml加えて混和したものを用意する。そこに水を加えていき、溶解しきらず白濁するまでの投入量をみる。
滴定機材はないので、0.1mlずつ量っては投入、を繰り返す。ちなみに、しずく1滴は0.04ml程度だった。
虫除け1ml+…… | 白濁までの水投入量 | 状況など |
消エタ 0ml | 0.6ml | 0.5mlでは、投入直後に白く見えるが、溶解する。 |
消エタ 1ml | 1.9ml | 1.4mlで投入で、底部にこどみが見えはじめるが混ぜれば溶解する。 1.8mlで白濁しかかるが、まだいけた。 |
消エタ 2ml | 3.15ml | 2.2mlあたりから、底部にこどみが発生。 2.8mlあたりになると、かなり溶けづらい。 3.1mlで、透明な中にわずかに細かい粒が浮遊。 0.05ml追加すると白濁した。 |
いずれの白濁液も、0.1mlエタノールを加えて混和したら、完全に溶解した。計測値が、水で薄められる限界付近であることが判る。
表を読むと、消毒用エタノールに対して、その1.2倍くらいまでなら水が混ぜられそう。もともとの製品に含まれるアルコール濃度は、消毒用エタノールより薄いであろうことも想像できる。
この結果をもとに、消毒用エタノールと水とを等量使い、虫除け剤を希釈することにした。
限界値1.2倍に対して等量なので、十分余裕を持たせて完全溶解できると考える。いったん完全溶解すれば、分離などせず状態は安定する。
虫除け剤(200ml)1本、消毒用エタノール(500ml)1本、精製水(500ml)1本、という作業の簡便さも考慮した。
DEET30%溶液を6倍希釈するので、5%溶液となる。
実験の撹拌混和中に思ったが、分離してくる透明な部分は、ディートそのものなのかもしれない。
水を投入したときに混ざりきらないことから、あぶれた「水」なのかと思っていたが、撹拌の際にけっこうな粘り気をみせる。
エタノール投入時には、比較的静かで分離したまま。撹拌すれば溶解。
水投入時には、明らかなモヤモヤが発生。一定量以上になると撹拌しても白濁、やがて何かが分離。
もしかしたら……
水とエタノールはかなり仲がよく、いい具合の混合比(消毒用より低い濃度)があり、水が加わるとエタノールはその割合に近づこうと水と混ざりたがる。
過剰な水を加えた場合、エタノールは水にとられ、もともとエタノールに仲介してもらって溶解していたディートはあぶれてしまう。
過剰な水なので、一部の水も「いい具合の混合比」から外れてあぶれるが、ディートとは水と油で混じり合わず。
エタノール水溶液と水とは相性はいいので、水はエタノールと混和し、表面的にはディートだけが分離してくる。
……などという想像したが、教わる先生がいないので確かめられないでいる。
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