まずは、おさらい。
ISSは、高度400kmほどを飛行している。このぐらいの高さでは、地上が天文薄明なあたりまで日の光が当たる。
ISSは、傾斜角51.6°の軌道に乗っている。これは、北緯51.6°~南緯51.6°の上空を飛んでいることを意味する。
夏至が近いこの時期、極地では白夜、北緯50°あたりでも薄明から抜けられない。そのあたりを通過するISSは、日本の多くの地から北天低くに見ることができる。
ということで、真夜中に日本の真北で、軌道北端を通るようなタイミングの日であれば、一晩中ISSが見えることになる。ただし地球1周に90分ほどかかる。そのタイミングと日の出日の入りとの兼ね合いで、5回見える日もあれば6回見える日もある。
今年のチャンスは、5月22~23日(SatelliteTracker)と7月21~22日(SatelliteTracker)ごろ。その2ヶ月前や2ヵ月後にも同様の軌道で飛ぶが、太陽が南に下ってしまうので深夜のパスは見えなくなってしまう。つまりこの2回の、それぞれ数日ずつしかない。
今回は、5月21日から22日にかけてトライした。
なお冒頭の写真は、撮り終えたころの根本山からの眺め。
遠くの山並み右端には富士山、中央左に浜松風力発電所の風車群、その左に三岳山。昼間なら風車の脇に立須(三岳鉱山跡)も見える。
左端には竜ヶ石山、右にピーク2つ目が鳶ノ巣山になる。
SatelliteTrackerによる、2018/5/21~5/22にかけての、日本近隣の6回のパスの様子を並べておく。
太陽高度-13°は、天文薄明ではあるもののだいぶ空は暗い。星座がちゃんと判る程度に星は見える。
ラストパスの-7°は、撮影にはかなりギリギリ。1分1秒ごとに夜が明けていく感じで、もう1等星ぐらいしか見えない。ISSがマイナス等級だから撮れたようなもの。
ときおり雲がかかる天気だったが、いずれも肉眼で確認できた。
撮影機材は、CASIO EX-10、28mm+中華製ワイコン。F2.2、4s露出で手動連写。ラストパスのみISO200で、ほかはISO400。
KikuchiMagickで比較明合成、Yimgで階調補正、BTJ32で縮小およびJPEG化を行った。
位置関係が把握しやすいように、北極星(こぐま座α星)をすべての構図に入れてある。
かなり大きくまたいでくる1パス目とラストパスを除き、最高仰角時刻を基準に、±(3分+α)程度撮り続け、すべてを合成してある。したがって星の日周運動は、ISSが写っている時間に相応しているわけではない。
1発目。うしかい座を横切り、かんむり座を貫いて富士山脇に沈む。月はあるが、明るく、仰角もあって見ごたえがある。時刻的にも見やすいパス。
1枚目画像左上よりに、柄杓を伏せた北斗七星。左下には北極星。右上の最も明るいのがアークツルス。2枚目画像は、写野を地平線まで下げた構図。
黄色い光跡がISS、赤いのは飛行機。光跡がだいぶ太いが、ワイコンの収差が大きいためで仕方ない。
1枚目画像右脇、うしかい座を横切っていく衛星は、長征2号Cロケット(42948 2017-058D CZ-2C R/B)。ISS通過前にゆっくり点滅しながら下っていった。
ひとみ(41337 2016-012A ASTRO H)、TELKOM3(38744 2012-044A TELKOM 3)など失敗衛星だけでなく、ロケット残骸でも回転点滅系のものがある。
アークツルス右上にも、小さくフラッシュした衛星が見えるが、USA173(28095 2003-054A USA 173)というもの。
2枚目左上にもかすかに衛星の痕跡があるが、偵察衛星 NROL-25(38109 2012-014A USA 234)らしい。
2発目。北西のやや低い空を通過。
北極星が雲に隠れつつわずかに覗く。中央上部の2輝星が北斗七星の合、左下の2輝星がふたご座のポルックスとカストル、中央下部で沈みそうなのがカペラ。右下には、α星は見えないが、Wになったカシオペヤ座。
画像左上には、人工衛星が2つ写っている。
南行(上行)しているのは、長征3号Cロケット(41325 2016-006C CZ-3C R/B)。東行(右行)しているのは、グローバルスターM046(25651 1999-012C GLOBALSTAR M046)。
左上にピンク色の何かが写っているが、左フレーム外にいる月が原因の、ワイコンで発生したゴーストではないか、と考えている。
3発目。本夜の最低仰角のパス。4.06°。
かつての3.43°、昨年の3.93°には及ばないものの匹敵する低さ。
不定期に増減光しつつ、赤くゆっくり移動していく。カシオペヤ座もすっかり顔を出した。
4発目。前回のすぐ右隣で、似たようなパス。最大仰角4.63°。消え行く先に並ぶ光の列が、浜松風力発電所の風車たち。
ようやく月が沈んだが、雲は断続的に発生してくる。
画像右上、ケフェウス座α星の脇に輝点が見える。0:55:38~0:55:34頃に現れたもので、グローバルスターM062(26082 2000-008B GLOBALSTAR M062)のフレアと思われる。
5発目。カシオペヤを真ん中に、こぐま座が切れないように……と考えながら撮ったような記憶がおぼろげにある。
右端には秋の四辺形が半分。地上シルエットに合わせるように、アンドロメダがよこたわる構図。
ラストパス。
刻一刻と明るくなる。ISO400では露出オーバー。ISO200に下げるも、撮っている最中にまたオーバー表示になる始末。
左下の輝星は、1発目で東天でかすめていったアークツルス。西のこんな低いところまできている。
このパスでは、うしかい座を下から上に貫いていく。10分前に撮った2枚目を見れば、左下にうしかい座、右上にはこぐま座があり、ひっくり返った北斗七星なども判る。
冒頭の写真のとおり、東の空はすっかり朝焼け。
ISSは1.5hのインターバルがあるので、その間に仮眠をとればなんとかなるか、などと考えていたが、寝られるものではない。
徹夜明けのヘビーな1日が始まった。
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