去年仲間入りのビロードイチゴ(Rubus corchorifolius)。花だけは大量に咲いたので、最後の一花をカジイチゴ(R. trifidus)に掛けてみた。
4月16日に施術、5月に収穫し、6月4日に播種。1果133粒。7月9日には3つほど発芽。その後10前後に増加。
腰水から半日陰での潅水に切り替えたが、9月に入ると30余に一気に増えた。気温か水管理か遮光管理か、何が気に入ったんだろう。
現在も発根、発芽が続々と。もっとも大きな葉は約1cm。以降、カジビロード(R. trifidus × R. corchorifolius)と呼ぶこととする。
通常キイチゴは、採り播き後越年、翌春に芽が出るのだが、カジイチゴは当年に出るものも多い。いま出ているのは、母体であるカジイチゴの影響と思われる。
ちなみに遮光は、簡易的に材木で組んでみた。屋根には無垢の床板を奢り、スノコ状にしている。
日周運動で影が動いて満遍なく遮光されるよう、床板は南北に流す。遮光面積比は50%としている。水切れと簡便さのため、北面への片流れ。
一般的なフローリング材のような合板ではないので、上に下に好き勝手に反っくり返っている。無垢材では、ひと夏過ごすのが限界。
鉄製の軽天材の方が軽く、屋外暴露による劣化もおとなしいので、来年はそちらを考えている。もちろん、すべて廃材にて。
ここには、ハスノハイチゴ(R. peltatus)やミヤマニガイチゴ(R. subcrataegifolius)、ミヤマモミジイチゴ(R. pseudoacer)など高山性のものも置いている。
高山性ではないが、コジキイチゴ(R. sumatranus)も直射に弱い。それを考慮してコジキカジF2(R. sumatranus × R. trifidus)もここに入れておいたのだが、えらく徒長してしまった。コジキカジは遮光なしで問題ない。
以前の記事では、コジキカジなどの実生はコジキに戻ると書いたことがあった。
つつましい状態の葉では、小葉も細身、基部小葉の片割れも無く、コジキイチゴの小ぶりな葉そのものだった。
実の生り方も、ちょっと粒が大きめな気はするが、鉢植えによる根域制限や受粉具合で説明がつくものと思っていた。
徒長してデカい葉になって改めて気づいたのだが、羽状ではなく鳥足状になっている。これは単葉×羽状複葉の掛け合わせで出る形状。つまり、雑種の子も雑種のままだった。
当時のメモ書きを読み返すと「羽状だけど2対までしか無い」など書いたものもあった。安易な思い込みはいけない。
今年のカジコジキ(R. trifidus × R. sumatranus)、トヨラクサイチゴ(R. × toyorensis)などには、変形葉が多く出た。上の4枚は9月4日のもの。
虫害としては、新芽が綴られて食い荒らされるハマキムシ類や、茎に産卵してパックリ割れるチュウレンジハバチが定番。若実が吸われて色が抜ける、カメムシの害もある。
今年のものは毛色が違う。ウイルスだと困るなぁ……と調べてみたところ、どうやらダニ害らしい。
葉が表側に凸に変形し、ひどくなれば縮れ、患部には毛が生える。茎にも症状が出る。
キイチゴハケフシなどと呼ぶようだが、要はフシダニ類による吸汁被害のよう。
キイチゴの葉に出る毛のあるフシ(虫こぶ)、とそのまんま。正式な名称なのかは知らないが、虫癭の類は、だいたいそんな名がつけられる。
思い起こせば、自生のクサイチゴなどにも、こんなボコボコ病巣がよく見られた。そう珍しいものではなさそう。
種の維持に関わるクリティカルな病虫害ではなさそうなので、とりあえずベニカXスプレー(ペルメトリン・ピレスロイド系)をかけておいた。
【 和名、学名の出典等について 】
- 標準和名や学名は、基本的に「YList」ページを採用する。
- Ylistに掲載のないものは、 Wikipediaの「キイチゴ属」ページのものを使う。これには「※」を付す。
- 交雑種は、種レベルの扱いがあり特に著名と判断したものはそれを使う。それ以外は独自名を付す。和名は両親から「イチゴ」を取った合成名、学名は両親を「×」でつないで連名とする。いずれも母体を先頭にする。
- 例:カジイチゴ(R. trifidus)を母体にコジキイチゴ(R. sumatranus)の花粉を付けたもの → カジコジキ(R. trifidus × R. sumatranus)
- 雑種は、入手個体を「F1」とみなす。特に必要がなければ「F1」とは記載しない。その子は「F2」となる。たとえばファールゴールドの実生は、「ラズベリー・ファールゴールドF2」と記す。
- 同種が複数株ある場合は、和名の後に番号を付す。従前1株だったものは、それを#1とする。
2 件のコメント:
2017年にカジイチゴ X ビロウゴイチゴの作成、コジキイチゴ X カジイチゴの作成が書かれていましたが、現在でもそれらの雑種は健在でしょうか。
カジコジキ、コジキカジは、ひと株ずつ残してあります。カジビロードは、'21、'22のものが成功しているっぽいです。'17のは失敗で、トヨラになってしまいました。
ちなみに各記事のURLをhttps://でなくhttp://にすると、コメントの下の「関連記事」項に記事がリストアップされます。この中に続報などが含まれるかもしれません。
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