手元のキイチゴたちも概ね早かった気がするが、例えばモミジイチゴ#2(Rubus palmatus)は3~4日程度なのに対し、#3は2週間早まるなど、かなりバラバラ。
寝坊助ほど影響が大きいのかな、という気もしている。ちなみに冒頭写真では、寝坊助らも含めてモミジイチゴはほぼ終わり。
そんな中で気になったのは、バラゾウムシ(ケシツブチョッキリ)の被害の少なさ。例年、バラだけでなく、キイチゴにもかなりの被害が出るのだが、今年はほとんど見かけない。
この陽気で一気に育った(&咲いた)ことが要因のような気がしてならない。かなりの株が咲き、散った現在でもなお蕾の多いニガイチゴ#2(R. microphyllus)だけは、そこそこの被害を受けている。
冬場にダイアジノンを撒いたことも、もしかしたら理由のひとつなのかもしれないが。
なお写真の花たちは、中央がコジキカジ、右奥の小さいのがニガ。左右の大花はトヨラ系。
トヨラクサイチゴ(R. × toyorensis)は、クサイチゴ(R. hirsutus)とカジイチゴ(R. trifidus)との雑種で、6~7cmクラスのクサイチゴ様の花をつける。
トヨラおよびそのF2#2の花は、せいぜい7cm程度まで。これらはともに、歯抜けで実着きが悪い株。
一方で、F2#1やその子F3は8cmクラスも多く、F3では9cmの大輪もあった。こちらは大きな実をつける豊産株。
単に株の調子の違いかもしれないが、実着きと花の大きさには、何らかの関係があるのかもしれない。
嗾けられた影響もあって、また雑種の増産をしてしまった。
今年は大量に咲いたビロードイチゴ(R. corchorifolius)。同じく黄実の代表格であるモミジイチゴと掛けてみた。
自生地での同居は見ていないが、おそらくは同環境でも育ち、同時期に咲いているはず。ならば謎のキイチゴが発生していてもおかしくない。
モミジを母体とするモミジビロードについては、3花とも失敗した。
ビロードを母体とするビロードモミジは、2花とも若実ができている。
ただしビロードイチゴは、咲く時点ですでに花粉が出ているように見える。咲く前に花弁や蕊を除去して施術したが、もしかしたら自家受粉の実かもしれない。
昨年播き、その年のうちに発芽したカジビロード。わっと出て冬越しで淘汰。生き残りは度合いの差は大きいが、各々元気に育っている。
本葉が大きくなったものを見ると、ビロード風に単葉のものと、3出複葉っぽいものがある。
カジっぽいテカりもあり。ビロードっぽく、葉表、葉裏とももふもふでもあり。
ニガクマイチゴ(R. × nigakuma)の実生も芽生えてきた。まだ「出た」というだけで、特筆することはない。
ミヤマニガクマ(仮)の方は、播けた数が少ないこともあるが、ひとつも発芽を見ていない。
カジキミノニガの実生も出てきた。
カジイチゴは黄実、キミノニガイチゴ(R. microphyllus f. miyakei)も黄実。その雑種は、ごく普通のヒメカジイチゴ(R. × medius)で赤実だった。
ニガイチゴはカジイチゴと掛けるとヒメカジイチゴになる。が、それは仮の姿(?)で、その子はニガイチゴになる。
では、キミノニガイチゴとカジイチゴとを掛けたら……の結果が出つつある。
昨年中に僅かに発芽したものもあったが、今春発芽が主流のよう。
それはまだ本葉が出かかったところだが、どうも色合いがおかしい子がいる。
一昨年、岐阜県神坂峠でみつけてきたミヤマモミジイチゴ(R. pseudoacer)やミヤマニガクマ(仮)あたりに、もしかしたら関わるかもしれない情報が、ネット上で見つかった。ヒメクマイチゴという。
この論文は今年の2月の発表らしい。「バラ科キイチゴ属の新雑種,ヒメクマイチゴ」とあり、pdfがネットで読める。
手元のミヤマモミジイチゴは、葉の形状が論文のそれに似ている。ただ、「日本の野生植物(木本)」の果実写真と同じにも見える。図鑑写真がじつは雑種?
ミヤマモミジイチゴの実生の葉も、どうも変に見える。ミヤマモミジイチゴと思っていた個体は、じつはヒメクマイチゴなのか?
ちなみにヒメクマイチゴは、岐阜と愛媛で見つかっているという。
まだ、「何か変」という段階ではあるが……
【 和名、学名の出典等について 】
- 標準和名や学名は、基本的に「YList」ページを採用する。
- Ylistに掲載のないものは、 Wikipediaの「キイチゴ属」ページのものを使う。これには「※」を付す。
- 交雑種は、種レベルの扱いがあり特に著名と判断したものはそれを使う。それ以外は独自名を付す。和名は両親から「イチゴ」を取った合成名、学名は両親を「×」でつないで連名とする。いずれも母体を先頭にする。
- 例:カジイチゴ(R. trifidus)を母体にコジキイチゴ(R. sumatranus)の花粉を付けたもの → カジコジキ(R. trifidus × R. sumatranus)
- 雑種は、入手個体を「F1」とみなす。特に必要がなければ「F1」とは記載しない。その子は「F2」となる。たとえばファールゴールドの実生は、「ラズベリー・ファールゴールドF2」と記す。
- 同種が複数株ある場合は、和名の後に番号を付す。従前1株だったものは、それを#1とする。
3 件のコメント:
はじめまして
金沢のhazejiと申します。 ご意見聞かせてください。
幼いころ、モミジイチゴをたくさん採って食べたものです。
が、最近山に行っても大きな実のイチゴの木がありません。
で、栽培しようかと思ったのですが、できればトゲも無い大きな実がたくさん成る木がほしいと思い初めました。
モミジイチゴとカジイチゴを掛け合わせれば、トゲが無く下向きに大きな実のなる品種?が作れるものでしょうか?
何年程度必要でしょうかね? いや残りの寿命との計算でして。。
まさにその雑種がこれです。 http://k-ichi.blogspot.com/2007/09/blog-post_78.html
その後も継続して採り上げています。記事の下の方に「関連記事」のリストが出るのでそれを辿ってもいいですし、カジモミジで検索しても出てきます。
トゲ無し大実、なんて上手いとこ取りはそうそう簡単には出ないでしょうけど、この掛け合わせで生まれた雑種はかなりバリエーションに富んでいるので、もしかしたらもしかするかも?
必要年数は……確率の問題でしょうから、まず規模、そして運、でしょうね。
一粒で80粒採れて発芽率50%としても40株にもなってしまいます。うちではもうこれで限界。
おおおお すごいです。
いろいろ調べてみました。ネットは便利です。
金沢でも海岸近くに群生しているところがありました。
この時期、花が咲くので見つけ易かったです。
1mちょいくらいかと思っていたのですが2m以上の太くて大きい物もあります。
実が熟すころに行ってみれば、どのくらいまで栽培すれば大きな実がたくさんできるのかも解ります。
が、予想はつきます。
もし普通の鉢ていどで栽培しても大きな実にならないとすると、雑種の選別もできません。
地植えにして大きくするとなると、とんでもない面積が必要になります。
品種改良は諦めですかね。残念。
それより、栽培技術で大きな実にした方が良さそうです。
6月に良さそうな株を探すことにしましょう。
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