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箱から出してキャップを外した
0.45xワイコン一式
とりあえずは使えるようになった中華なワイコン
EX-10に載せての撮影も回数をこなし、またあれこれ調べたこともあるのでまとめておく。

購入品には付属品として、前後のレンズキャップと、気持ちクッション性のある薄手の巾着が同梱されていた。
前キャップは外側にカポッと嵌めるタイプ、後方キャップは捩じ込み式。捩じ込みに気づくまで、しばらく奮闘してしまった。

ネット情報をあたると、これに似たレンズは2011年ごろからレビューがある。売れ残りというよりは、意外と手堅く売れている長寿アイテムなのかもしれない。
なお、ネジ寸法以外はモノサシ測定なので、値は目安程度に。


まずは構造から。


0.45xワイコン構造概要
購入したワイコン(ワイドコンバージョンレンズ)は、0.45倍を謳う2枚レンズタイプ。いま風に言えば2群2枚。前玉に凹レンズ、後玉に凸レンズの逆ガリレオ式。レトロフォーカスなどとも呼ばれる。
ともに単レンズと思われ、特段のコーティングもされて無いように見える。各レンズは、別々の鏡筒に装着し、捩じ込み連結されている。

前玉の凹レンズは、有効径57mm。両凹レンズで、よく見かけるメニスカスではない。物体側がR=18cm(反射光がf=9cmぐらい)、カメラ側がR=4cm程度になっている。
前玉を納めた筒の先は、φ62mmの雌ネジが切ってある。フィルタなど取り付けが可能だが、半周程度しか掛かりがない。手前側はφ58.2mmほどの特殊寸法の雌ネジ。
筒先には滑り止めのギザが彫られており、外面には「DIGITAL HIGH DEFINITION 0.45X SUPER WIDE ANGLE LENS WITH MACRO JAPAN OPTICS」と印刷されている。JAPANブランド健在。

凸レンズは、カメラ側から見た有効径は41mm。両凸で、単体でクローズアップレンズ(マクロコンバージョンレンズ)としても使える。焦点距離は7.5cm程度なので、かなり度は強め。市販では見かけない#13相当になる。
レンズ後面は鏡筒ギリギリまで来ている。独自のアダプタで装着する際は、捩じ込み代にも注意を払いたい。
鏡筒カメラ側はφ58mmの雄ネジ、先端側はφ58.2mmの雄ネジ。多少緩くなるが、逆向きに取り付けることが可能。ただし当然、その状態でカメラには着けられない。内ネジなども切ってない。
短いこの鏡筒には、「MACRO」と刻まれている。

採寸しつつ類似品を眺めて気づいたが、φ46mm~φ58mmタイプは同じレンズを使っている模様。
φ58mm用なのに後玉が41mmというのは心もとない。φ46mm用でも、前玉の先はφ62mmとされている。価格もこれらは同一帯。
オリンパス純正のCLA-12などを使って、φ55mmタイプを接続しても、撮影結果はほぼ同じになるはず。外観が多少異なる商品もあるが、おそらく中身は同ではないかと想像する。

ワイコンの中には、超薄型を謳ったタイプもある。
こちらはコメントにもあるように、近視メガネと同じ凹レンズ一枚のもの。マクロで∞を撮る形になる。カメラによっては、近距離が撮れないとかピントが出ないとか、そんな可能性も考えられるのでお勧めしない。


そして撮影性能について。
もともとの設計にないレンズが追加されるので、収差、ゴースト、ケラレ等、不具合が出がちなのは仕方ない。


ケラレありでの撮影
さようなら天宮1号」より

ケラレをなくしての撮影
一晩にISSを6回観る」より
ケラレについては、前回記事に書いたとおり、ズーム全域をケラレなくカバーすることはできない。カバーするにはφ41mmの後玉ではサイズが足りない。
ワイド端専用(f=28~63mm範囲)として、ギリギリまで接近させれば、ケラレないイメージを得られる。その状態でも、それなりの周辺減光はある。

色収差はある。明るい方を向いてイメージサークルの際を見ると、青く縁取りされている。
点光源を見ると、中心方向に青、外側に赤が見える。2枚目画像下辺隅の街灯が判りやすい。ただ、よほど画角の隅でない限り気にはならない。

星像の流れもある。非点収差なのか色収差なのかよく判らないが、放射状に流れる。
画角隅ではかなり流れるので、固定撮影で星を流すと、暗い星の写りが悪くなったり、輝線が妙に太く主張したりする。
ケラレがあったときの方が、この収差は小さく見えた。単純に拡大されたためか、カメラレンズとの適切な距離があるのか、その辺はわからない。


ゴーストについては、だいぶ癖がある。


イリジウムダブルフレア
SKYMEDフレアが~」より

2018/5/21
月をかすめる天宮2号

2018/3/10
西空に沈む冬の星座たち

1枚目は、ワイコンなし28mm、250s露出。2枚目は、ワイコン装着(ケラレなし)28mm、230s比較明合成。3枚目は、ワイコン装着(ケラレあり)28mm、250s露出。

1枚目は、月の光条にまぎれて棒状のゴーストが出ている。離れた場所に出ることもある。
とはいえ、普通に撮って邪魔に思うことはあまりない。この状態を、比較の基準として見ていく。

2枚目には、大小様々な6角形ゴーストが並んでいる。これは絞りの形なので、本体レンズから反射放出された光が、ワイコン内各面で再反射したものと思われる。
そのほかにも、月の光条と同方向に向いた棒状のものや、中央と右上に斜めを向いた棒状のものが写っている。同方向の棒状については、1枚目にあるようにカメラ本体由来の可能性はある。
かなり激しい出方ではあるが、強めの画像処理をしているせいもある。一般撮影では気づかないかもしれない。

問題なのは、2枚目矢印の先の光点。これは、強烈な月光を縮小コピーしたゴースト。光源が動けば、このイメージも縮小比例して動く。
星が流れているので気づくが、そうでないと星なのかゴーストなのか区別ができない。

3枚目にも、同様の縮小ゴーストが写っている。画像下辺の街灯列を縮小したアーチが、M42のすぐ上に見えている。
カメラレンズ第1面とワイコン第4面の凸面で、2度縮小反射された光が飛び込んだもの、と想像する。
月クラスの光源だと2等星ぐらいに写る。またカメラレンズを28mmにしたときにだけ見られる。ピント位置は∞で、星と同じ。

このほかにも、ISS6回の写真にある「左上のピンク」のような、思いもよらないものが写り込むこともある。
ワイコンの収差、ゴーストの類は、本体側レンズで絞っても効果は無い。止むを得ない事情がない限り、明るい光源は十分にフレームアウトするしかない。


ワイド化の性能について。


写真から星を拾う

星の位置情報から計算
謳い文句は0.45倍。ただし、各方面で言われているように、そこまでの縮小性能はない。
価格勝負の中国製品なので、テキトーに半値八掛け二割引ぐらいと見れば、0.82倍が許容閾値とおける。
28mmの0.82倍なら23mm。ちょっとワイドな25mmよりさらに広く、28mmと比べて10°以上広角になる。

測定は、実際に星野を撮影し、中心と画角端もしくは端の2星を抜き出し、両星間の離角を求め、画角端距離に補正して実写角とした。
星の位置は、SatelliteTrackerの星空モード、およびcalskyのdeep-sky星図より得る。

2星の離角は、天の赤道近い狭い範囲なら、赤緯赤経から三平方の定理で計算できてしまう。が、広角だとそうもいかないし、極付近を撮ったら手も足も出ない。
天球を球面とみなして、赤経は三角関数が絡みそう……自力ではそこから一歩も進めなかったので、ネット情報を参考にした。三角関数の初歩程度の知識で、なんとか読める。

視野・離角計算ざっくりした解説と実際の計算ができる
極座標(赤経・赤緯)と直交座標(方向余弦)の変換 (1)
  : セッピーナの趣味の天文計算
図入りで一歩一歩解説があって解り易い
初心者必読
ベクトルの内積レシート計算は多次元ベクトルの内積らしい

天球を単位球面とみなし、そこに星が貼りついていることとする。2星について、赤緯赤経から方向余弦を求め、それらの内積を計算する。……と、ポロッと角度が出てきてしまうという魔法。
理解度は浅いままだが、とりあえず計算結果は出せた。画像は、星を拾い出し、Oooで計算している様子。結果をまとめると以下のようになる。

f(mm)
wはワイコン有
算出f(mm)倍率拾った星の位置
28 26.580.95中心-左上
28 25.850.92中心-左辺上1/3
28 26.930.96左上-右下
28w16.270.58左辺中-右辺中
28w16.590.59右上-左下
28w16.090.57中心-右辺中
28w18.640.67右上-右下(ケラレなし)
28w16.500.59右上-左下(ケラレなし)
28w16.250.58左上-右下(ケラレなし)
35 33.700.96右上-左下
35w22.200.63中心-左下
35w22.530.64右上-左下
35w22.590.65右上-左下(ケラレなし)
35w22.610.65左上-右下(ケラレなし)
50 49.670.99左上-右下
50w35.480.71中心-右辺上1/3
50w35.830.72右上-左下
112111.290.99右上-左辺左1/3
左表は、算出したもの全て。
白抜きは、ワイコン無し撮影に於いて、妥当と思われる処理を行った結果。ピンク抜きは、ワイコンを使った撮影で、同様の結果。グレーは参考値。

算出した焦点距離は、アスペクト比を無視して、対角画角からそのまま35mm換算したもの。35mmフィルムは3:2、EX-10は4:3になっている。
EX-10では、最高画質は12M(4000×3000px)とされているが、撮像素子はそれぞれ数10pxずつ大きい。DNGファイルで確認できる。
JPEGファイルは、その中から切り出し、ノイズ処理、各種収差処理など行った後に出力されるもの。これら要因による値のズレも考えられる。

結果を見ると、そもそものカメラレンズも、広角側は広めになっている。
ワイコン性能としては、カメラ側がもともと広角気味なことを考慮しても、ワイド端では0.62倍程度まで縮小されているよう。
標準レンズ相当の50mmでは0.72倍で、一般に言われる「0.7倍程度」に合致する結果となった。

f=17mmにもなると、冬の7つの1等星に昴(M45)まで含めてすっぽり入る。画角でいえば、長辺84°、短辺63°、対角105°ほど。
画質はともかく、一発で賑やかに撮りたいムキには魅力の広さといえる。

さて。

ここでもう一度、数字を振り返ってみる。
広角~標準あたりで0.62~0.72倍程度と計算された。中間の35mmでは0.67倍ぐらい。
そういえば「0.45x」は、何が0.45倍なのか書いてない。もしかしたら焦点距離ではなく面積? ……だとピッタリ0.45倍だなw


最後にマクロ性能について。

凸レンズの焦点距離から、どんなカメラでも7.5cmぐらいまでは寄れることが判る。
EX-10は、ワイド端(28mm)では1cmマクロを実現しているので、マクロレンズを必要としない。
テレ端(112mm)では20cmしか寄れないので、これと組み合わせることも考えられるが、5.5cmぐらいまで寄れたとしても1cmマクロの方が勝りそう。

ちなみに、カメラレンズとマクロレンズ間を至近とした場合、もともとカメラで寄れる距離(a)、マクロレンズの焦点距離(このワイコンではb=75)、最終的に寄れる距離(f)は、次の式で計算できる。
1/f=1/a+1/b

ワイコン全体としては、星野は∞でピントが合ったことから、2枚レンズでパワーゼロになっているはず。
いちおうワイコンを着けたまま1cmマクロ接写してみると、前玉にぶつけてもまだ合焦に余裕があった。
生で1cmマクロで撮った方が大きく写るし、レンズにぶつかると対象に光が当たらないし、前玉前面にピントが合うことでレンズの汚れまで写ってしまう。良いことは何もない。

EX-10にとっては、ワイコンのマクロ機能はオマケ。細かいことは気にせずに、遠方を広く撮る用途が良さそうだ。

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