since 2007.8 by K-ichi

まずは、リチウムイオン電池にブレイクスルー、という話。
要約する。

積水化学は、リチウムイオン電池の容量を3倍に増やす電極を開発した。炭素系の代わりに珪素系合金を使う。EVの走行距離が、実用的な600km/1回充電、程度になる。'15量産の予定。
製造過程のコストダウンも実現した。電解液をゲル化することで、簡易な塗布という工法で製造が可能になった。生産速度は10倍に、1kWhあたりのコストは1/3になる。
現在、1kWhあたり10万円程度かかり、EV車1台あたり20kWhほど積んでいる。自動車業界は「1kWhが3万円になればガソリン車並みの車価が可能」と言う。またNEDOは「'20に2万円」の目標を掲げる。

積水化学のページにも、新着情報がある。
うちのインテグラにも旧車税上乗せが始まった。とはいえHVは値段も品揃えも……などと言ってる間に、一気にEVの時代が来そうな勢いの話。1面で採り上げるだけのことはある。

でも、よく読むとよく分からない。
電極の性能が3倍に上がった、1kWhあたりの製造コストが1/3になった、これらはそれぞれすばらしい。が、実用的な600km走行可能なEVを作ろうとしたら、結局は電池代200万円は変わらないのではないか。
両者は同等のコスト改善効果を意味している。ということは、両者を組み合わせれば、1kWh当たりのコストは1/9になったということなのか。もしそうなら、NEDOの目標はとっくに超えている。
それとも、20kWh、200kmのやっつけ仕様のまま、電池を減らして「安くできました」と売る気なのか。
記事からは読み取れない。

新開発した材料についても情報がない。
日経新聞には、電極は合金とある。積水化学の記事には、「高容量ケイ素系負極材料」とあるだけ。
ググってみると、そもそも炭素の代わりにシリコンを使えば、安全マージンを見込んでも容量は一桁上がる、という記事すらある(slashdot記事)。
このニュースは、そのたった1/3でしかない。やっぱりよく分からない。




「キラル光磁石」を開発、という話が片隅にあった。東大の大越慎一氏らが開発したもの。
難解。要約できるような容易なものではない。画をふんだんに使った発表記事がある(東大のページ/JSTのページ)。

光磁石とは、光を当てることで、磁性を変えることができるもの。開発した物質は、元は非磁石で、青色光を当てると磁石になり、赤色によって弱まる。
キラルとは、左右の形があるもののこと。鏡像関係だが同一でない、右手と左手の関係のようなこと。かつて野依さんらがノーベル賞をもらった、「不斉合成」の「不斉」のこと。

光で磁性状態を変えると、キラル光磁石から出る光の波面が90°変わる。日経記事には、青と赤の光の照射時間を調整すれば、0~90度の間で角度を任意に設定できる、ともある。何だかすごいことという雰囲気は感じる。
いろんな用途が想像されているが、理解の域を越えている。光だけで記録/読出しができる光磁気媒体とか、従来の1bit分のスペースで多値化による容量アップとか、そんなこともできるんだろうか。

ただし、この物質は-261℃以下でないと動作しないという。これは水素の沸点より低い。

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