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ウラナミシジミの卵だらけのムクナマメ
ちょっとタイミング的に遅すぎるだろ、などと思いつつも、なんやかんやで小さな畑を引き継ぐことになった。

先々代に連れられて、土に花に虫に馴染んだこの畑。その当時からのクリの樹も植わっている。
先代はこの手の分野に向いてなかったようで、引継ぎもままならず、ゴミだらけ草だらけ。樹も伸び放題で、枯れ枝だらけ病虫害だらけ。他所の畑なら一掃リセットしてもおかしくない状態だった。
掘ればいくらでも出てくるシート類。劣化してパリパリ、ボロボロのものもある。カーペットや座布団の残骸。朽ちる部分は朽ちるのだが、化繊分だけはしっかり残る。畳が朽ちた後の糸は強靭で、草刈り機(刈払い機)に巻きつくのには閉口した。
散々な有様ではあったが自然に還りかけていたことで、モグラ山があちこちに立ち、キノコが生えまくる。土壌的には豊かな雰囲気はあった。

そんな残骸の後始末を数年続け、ようやく目処がついたところでさてどうしよう。思い出の樹は残したい。勿怪の幸いか、土は肥えていそう。そんな時にふと目にしたのが自然農というキーワードだった。自然農、自然農法、自然栽培など、細分したがる向きもあるが、個人的にはどうでもいい。


俄かにあれこれ調べてみると、耕作の種類は3つに分けられるらしい。慣行農法、有機農法、自然農法、で、それらはざっとこんな形と考える。

慣行農法はごく普通の方法。
圃場を耕し、育てるために肥料を与え、消毒で病虫害を防ぐ。長年ひとびとが、より効率よくより収量を確保するために研究を積み重ねてきた農法。当然ながら最もコスパがよく、現代社会においては絶対に欠かせない手法である。
人それぞれに事情はあるのだが、安全性には十分配慮されているので、普通の人が普通に食べる分には問題ない、と普通の人は考える。

有機農法は慣行農法から化学物質を取り除いたもの。
農水省(「有機農業とは」など)も進めている農法。化学物質不使用のほか、遺伝子組み換えも扱わない。定量的な判断基準を示し、有機JASなど公的なお墨付きを与えることもしている。有機、グリーン、オーガニック、などの広告文句がつけられるのはこのあたり。

自然農法は自然から恵みをいただく農法。
公的な定義は無いので、個々人でかなりの開きがある。極力手はかけず石油資材も使わず、仙人のような暮らしをする人もいれば、有機農法と大して変わらないものまである。
共通認識としては、有機より慣行側に振れない、化学肥料や化学的な農薬は使わない、ということはある。福岡さんと川口さんがレジェンドとして扱われている。
不耕起、無肥料、無農薬を謳うことが多いが、そうとも限らない。おおよその方向性としては、初めに畝たてはするが、基本的には耕さない。必要に応じて解すことはあるが、天地返しなどはもってのほか。作物が負けない程度の除草はするが、必要以上に地面を裸にしない。肥料(補いおぎない)は、身近な有機のものを必要最小限。
その土地の自然サイクルをなるべく維持し、その中で作物を育て、収穫して減った分は有機物で補ってやる。人様が耕作するのが目的なので、必要な除草、除虫はするが、目的外の場所では好きにさせておく、そんなところか。流行のSDGsに絡める向きもあるが、そのあたりはよくわからない。


とりあえず、自然農法的な作付けを試している。冒頭のムクナマメ(ハッショウマメ/八升豆)も、地が肥えると聞いてさっそくヤフオクで購入したもの。
ひたすら茂るだけで何だこれはと思っていたが、クズが咲き出す9月半ばに蕾が見え出し、月末には濃紫色の花が咲いた。時を同じくしてウラナミシジミが乱舞するようになり、蕾に花に実に卵を産みまくっている。写真の若実にも、黄色い点が無数に付いている。

肝心の収穫の方は、安定しない。成功もあるが失敗の方が多い。
ただ、その失敗の原因を突き詰められれば、その知見は慣行農法では得られないレベルの深いものになる。仮に慣行農法に移行するにしても、大きなアドバンテージにできる。
なにより地べたを這い回っていると幸福感がある。理由は判らない。

自由になる土地が得られたので、その一角に役目を終えたキイチゴらを混植しておくスペースも設けた。
勝手生えのカジイチゴやモミジイチゴ、交雑失敗した純粋種のビロードイチゴなどなどを地植えにしておく。モミジやニガは交雑母体として成功したことがないが、ミツバチ、ハナアブらに任せておけば上手くいくかもしれない。


最後に、気になる動画などを何本か。

山岡さんのサブチャンネル、「自然農 日々の記録」の最新動画。
2~3日に1本は上がる、興居島ごごしまにある畑の今の様子を映す映像。撮影者フィルタはかかるわけだが撮りっぱなしに近いので、お隣さんの畑を覗くような情報量がある。
最近は「山の畑」がまったく出てこないのだが、止めてしまったのだろうか……



山岡さんのメインチャンネル、「島の自然農園」の最新動画。
これは、というネタを取り上げて体裁を整えてアップされる動画。参考書のように見られる。映像後半は、自然農の心得とか、哲学的な話とか、そんな類のネタが入ることが多い。
ちなみに収入源(のひとつ?)であるセット販売は、100サイズに10種前後のおまかせで2500円+送料とのこと。野菜としては安くはないが、収入源としては高くはない。営農は大変だ。



中谷さんの「中谷自然農園」の最新動画。
30年余も続けておられるらしい。山岡さんより有機農法に近い雰囲気。
詳細は判らないが、代を重ねて規模もそれなりにありそうなので、この方面でしっかり利益を上げて継続的に営農するヒントがどこかに隠されているかもしれない。



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