NHKニュースより
開発したのは「臭化トリオキソトリアンギュレン」という。このコバルトブルーの物質は、ベンゼン環6個が平面に三角形に並んだ形の有機化合物……なのだが、素人にはこれ以上の理解ができない難解なもの。
リチウムイオン電池(Wikipedia)の多くは、正極にリチウムとコバルトの化合物を使う。コストの7割をコバルトが占めるともいう。このコバルトの代替として、この臭化トリオキソトリアンギュレンを使う。
レアメタルであるコバルトを使わないことで経済的外交的に有利である他に、物性としても優れている。おおむね従来の倍程度の容量、200~300Ah/kgを実現しており、また軽量でもある。
現在は100回の充放電で3割の性能低下があり、電圧も2V台とやや低め。量産化など工業的な研究はこれから。
- プレスリリース(PDF)
- 阪大大学院物性有機化学研究室・森田靖准教授研究グループ:Nature Materials 誌に論文掲載!!
- 大阪市立大:レアメタルを使わない、大電気容量の有機分子スピンバッテリーを開発
- 元素戦略/希少金属代替材料開発 第5回シンポジウム:有機分子を活物質に用いた二次電池の高性能化と充放電機構の解明(PDF)
- NHKニュース:レアメタル使わない電池開発
単3形×2
単3形×4
単4形×2
単4形×4
リチウムの電池といえば3V系のイメージがある。降圧回路などが入っているのかと思いきや、正極材料によって3Vであったり1.5Vであったりするらしい(Wikipedia)。また二次電池であるリチウムイオン電池とは別物という。この電池は、通常の乾電池と同じ1.5V。
リチウム電池は特に新しいものではなく、かつては富士フイルムからも販売されていた。
大電流域での長寿命が特徴で、また温度変化に強く-40℃でも使用できる。軽いため、「中身が入っているか一瞬疑った」という話も聞く。
Panasonic製は、発売間もないせいかアマゾンには置いてない。同等と思われるシック・エナジャイザー製を見ると、やはりそれなりの値段。比較対象のアルカリ乾電池はピンキリとはいえ、1本100円ならかなり立派な値段。乾電池として見ると、Panasonicの想定する1本300円超はちょっと高い。
小口での購入が多いのか、現在の価格(含送料)を見ると2本組の方が割安になっている。
17日の日経新聞は、バッテリ性能向上に関する寄せ集めネタをトップ記事としていた。
要旨を列挙してみる。
トヨタ、東工大、高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、新化合物を使った新型蓄電池を開発。これは全て固体から成り、発火防止材などは不要。シート状などへの加工も容易なため、体積あたりの電気容量は数倍にできる可能性がある。2015~2020年の実用化を目指す。
検索トップに挙がったKEKサイトによれば、おそらく8月に発表したプレスリリースの件と思われる。新聞記事では「次世代蓄電池」という謎に包まれた記述だったが、全固体型のリチウムイオン電池なのではないか。
KEK:世界最高のリチウムイオン伝導率を示す超イオン伝導体の開発
マツダと広島大は、容量が1.8倍になる電極を開発。数100nmの球状炭素分子を使う。5年程度で実用化を目指す。
ググってもそれらしいページがヒットしない。第52回電池討論会の講演リストに「小粒径カーボン粒子のリチウムイオン二次電池負極特性」があるが内容は不明。
ちなみのフラーレン最小のC60は約1nmらしい(参考:_っとナノム)。
NECは、コバルトに代えて安価なマンガンを使うリチウムイオン電池を開発。電解液も改良し、充放電2万回を実現。家庭で深夜電力を昼間使う用途なら13年に相当。5年後を目処に、20年寿命で実用化を目指す。
17日付のプレスリリースがNECから出ている。
寿命を従来比2倍以上に向上するマンガン系リチウムイオン二次電池技術を開発
マンガンを電極に使うタイプでは、電極保護が十分にできていなかった。あらたに開発した有機硫黄化合物の電解液への添加によって実用レベルに達した、ということのよう。
冒頭のニュースの件もあり、脱コバルトは目処が立ったと言っていいのかも。
別稿ながら、同日紙にあった記事。
帝人と東工大は、新しいカーボン・ナノファイバーを開発した。長径100~300nm、短径50~100nmの楕円形断面で、炭素シートが積層した形。反応性の高いシート端がファイバー表面に出る形のため、それ自体は安定のナノチューブに比べて応用範囲が広くなると見込まれる。
これもネット情報は見当たらず。
身近でありふれていながら、炭素は奥が深い。
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