「次に見られるのは105年後!」などと煽りたてられていた金星の太陽面通過(日面通過)が、6日に起こった。
宵の明星として煌々と輝いていた金星がいつの間にかいなくなり、真っ黒な影となって太陽の上を通る現象。
4日の部分月食は曇天で見られず。6日の天気予報もおおむね悪く、先日の金環日食で運を使い果たした感。浜松では朝から曇りで、お天道様の位置がなんとなく判る程度。ところによっては見えているようで、テレビではその様子が放送されている。
今回の現象は金環日食とは異なり、7:10過ぎから13:50前までと長時間にわたる。半分諦めつつも準備だけはしておく。
そして10:00ごろ。
なんとなく空が明るくなってくる。見上げると北西は雲が切れて、一部青空も見える。
やがて青空が頭上に移動し、昼ごろまでの2時間ほどの間、金星の太陽面通過を見ることができた。
金環日食は、肉眼で判るほどに太陽の形が変わる。日食グラス眼視でもピンホールでも木漏れ日でも、十分観察できる。ただ今回は、ぽつんと小さい影が見えるだけ。上記方法では無理だと考え、久々に望遠鏡を持ち出すことにした。
機材は、20数年前、かのハレー彗星回帰時に購入した、ビクセン製SUPER HALLEY SR-1000。
10cmF10ニュートン反射式というありふれた鏡筒を、極軸望遠鏡やモータドライブなど外せるものは全部外してコストカットしたスーパーポラリス赤道儀に載せてある。結局それらは後に追加購入することになったが、星雲、彗星、惑星など楽しめ、ファミスコ60S(f=400mm)を載せて1時間ガイドしたりなど、けっこう使えるやつだった。ただ、天文は「大人の趣味」の世界であることを知り、金銭的に越えがたい壁が見えてくると、徐々に使う機会は減っていった。
久々に動かしてみたが、機械部は実に快調。主鏡はかなり惨めな状況になっているが、太陽を見る分には問題なさそう。
何年も何年も貯めたお年玉を叩いた69,800円。ちゃんとした赤道儀望遠鏡を、ガキの小遣いでも買える値段で出してくれたビクセンには感謝。
SR-1000には、Or.5mm、K.20mm、サングラスも付属していたが、今回は追加購入してあったH.M25mmで投影することにした。減光フィルタを使わない太陽観測では、貼り合せレンズの無いタイプが良いといわれる。H.Mはこれに該当する。
投影板は屈折望遠鏡専用のオプションなので、コピー用紙を板に貼って代用する。f=1000mmで25mmアイピースなので倍率は40倍。1m離れれば40cmに見えるハズ。
ちなみに反射式は、焦点に近い副鏡に負担がかかるとか、直接光が目に入りやすく危険、などと言われるらしい。f=1000mmのこの筒では、焦点で1cmほどに集光されるが、焦げる様子はない。もちろん、直接光は猛烈に眩しいので、見ないほうがいい。
家の壁まで約2.5m。ここでは太陽像は1mになる。ここまで拡大すると、10cmの集光力ではちょっとつらい。きれいな投影板があれば見れないことはないが、やはり周囲を暗くしたくなるぐらいの暗さ。
金星像も3cmほどと、貼り付けた磁石と同じぐらいになる。ニガウリの葉の左上の、ぼんやりした丸い影が金星。
適当な距離をとって投影すると、かなりきれいな像が見られた。小さいながらも黒点が、結構な数確認できる。金星像も、はっきりくっきり見える。
強いて言えば、H.Mアイピースの色収差と思われるものを少し感じた。視野周辺では同じような傾向が見られたので、この形式の特性なのだろう。太陽の色は比較的どうでもいいものなので、光量に余裕があれば鏡筒口に色セロファンでも貼ってしまえばいいかもしれない。
投影板が屈折望遠鏡専用オプションだったため、投影像を見るのは実は初めてだったが、ここまできれいで見易いとは思っていなかった。反射望遠鏡にそのまま付けるのは難点が多いが、大き目の反射鏡を使った投影施設なんてものもできそう。
時間的余裕があったので、日食で使った手鏡ピンホールでも試してみた。
太陽像の1/30しかないホクロが、ぼやけ気味のピンホール像で見えるわけが無い、と思いつつも実験。案の定、ブロック塀に映された像では確認できない。コンクリートブロックは表面が荒れているので、念のため「チラシの裏」をかざしてみる。すると、ぼやけて歪んではいるものの、金星像が確認できた。太陽像の右下の小さな影の染みが金星。
歪んでいるのは、金環日食時に比べ太陽とブロック塀との角度が大きく、像面側から見ると歪な形のホールになっているせいかもしれない。
また、日食グラスでの眼視もしてみた。
丸い太陽像の上のほうにホクロが見えるはず……と、よく見ると見える。黒点が結構あったが、それは見えなかった。金星の黒い影だけがはっきり見える。
太陽の見かけの大きさは0.5度強(32分)。金星像は1/30以下の1分弱(58秒)。本当に小さいが、これはちゃんと見えた。ちなみに水星像は10秒しかないので、水星の太陽面通過は肉眼では無理そう。
宇宙から観測したものも公開されている。
太陽観測衛星「ひので」が撮ったもので、サイトにはさまざまな画像、映像が公開されている。
「ひので」から見た金星の太陽面通過
実にはっきりくっきり。
太陽面でなく、コロナを背景にした金星の影もある。
左の画像のように、金星の輪郭が見えるものもある。金星の大気によるものだろうか。
since 2007.8 by K-ichi
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