モミジイチゴ#1(R. palmatus)がここまで生るのは初めてかもしれない。
比較的実着きのいい#3は、遅れ気味ながら順調に豊作。サイズも大きめ。雌蕊が無い花の多い#2にもちらほら生っている。
前記事の直後、3/16に#1、3/23に#3が開花。5/5ごろから熟し始めた。
雑種のカジモミジ#3(R. trifidus × R. palmatus)は、22日、#2はその翌日に熟した。開花はそれぞれ4/6、3/26。#2は熟すまで日がかかりすぎなので、見落としがあったかもしれない。
カジモミジ#3F2にも蕾は着いたが、咲かずに枯れ落ちてしまった。#3より全体に大振りだが、特徴は似る。
カジイチゴ(R. trifidus)は、透明な黄色い果肉の中に、種子が紅点として見える。モミジイチゴはそれほど目立たない。モミジイチゴは、雌蕊の名残の毛が目立つが、カジイチゴは短くそれほどでもない。
雑種は、紅点も粒の毛もあまり目立たない。ただ、実入りが悪い(=粒が大きい)影響も考えられる。
#3の葉は、鋸歯が鋭い小さなカジイチゴ風。#2は、鋸歯の深い大ぶりモミジイチゴ風。
写真は、B5用紙、カジイチゴの標準的な葉、物差しを背景に、カジモミジの標準的な葉を並べたもの。上が結果枝、下が今年のシュートの葉。
大実のトヨラクサイチゴF2#1(R. × toyorensis)も順調。3/30に開花、5/5に熟した。花は直径8cm。
#2はいつも実入りが悪いが、今年は不安定ながらそこそこの実が着いた。受粉がよく行われれば、ある程度は生るよう。親株は相変わらず生っても5粒ほどの歯抜けだが、数は多かった。
#1の子、トヨラF2#1F3にも実が着いた。大きさこそ#1よりやや劣るが、実着きはいい。この冬に8号に植え替えたばかりなので、まだ単純比較はできない。
大実のブラックベリーには、平均7.6gなどというものもあるらしい。ラズベリーは果托が抜けてしまうのでその分不利になるが、計ってみた。
比較対象の、モミジイチゴ#1は約0.82g、ヒメバライチゴは約1.5g。自生地の元気なやつに比べると小ぶり。対するトヨラF2は5.3g。小さめな実は4g切れるものもあるが、おおむね4g台はキープしていそう。
生り始めに鳥に食われたデカい実が惜しい。露地のカジイチゴだけでなく、今年は鉢物まで狙われ始めた。
使用のはかりは、A&DのHL-100。現行後継機は、HT-120になる。
そのほかは、3/19カジイチゴ、3/24キミノニガイチゴ(R. microphyllus f. miyakei)、3/28ヒメバライチゴ#1(R. minusculus)、3/29ニガイチゴ#1(R. microphyllus)、4/12クマイチゴ(R. crataegifolius)、4/15ミヤマニガイチゴ(R. subcrataegifolius)、4/22ボイセンベリー(R. ursinus × R. idaeus ※)、4/24クロイチゴ(R. mesogaeus)、4/25ラズベリー(R. idaeus ssp. idaeus)、5/4ハスノハイチゴ(R. peltatus)、5/13エビガライチゴ(R. phoenicolasius)、同日ブラックベリー・ソーンフリー(R. fruticosus ※) 、5/19バライチゴ(R. illecebrosus)、などと開花が続いた。
カジイチゴ、モミジイチゴ、ヒメバライチゴ、クマイチゴ、ニガイチゴ、キミノニガイチゴなどは熟した。
昨年は時期を逸したので、このタイミングで確認してきたが、自生地のキミノニガイチゴは虫害がひどく、今年もまともな結実を見られなかった。
雑種の特徴について、ざっくりまとめて表にしてみた。
名称 | 花 | 受粉後の萼 | 実の色 | 新シュートの毛 | 棘 | 葉、備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
カジイチゴ | 白色。複数花まとめて上方に咲く。花弁は丸く、180°開き、しわくちゃ。 | 無変化 | 橙 | 短い赤い毛が多い。 | 無 | 大型種。無裂~7裂葉。 |
モミジイチゴ | 白色。通常1花ずつ、まれに小枝を伸ばし先の葉腋にもう1花。下向きに咲く。花弁は長めで中太り、しわのないものが多い。 | 無変化 | 橙 | 無し。 | 多 | 無裂~5裂モミジ様などの葉。鋸歯がかなり深いものもある。 |
ニガイチゴ | 白色。1~3花ずつ上向き開花。花数は株の性格による。花弁は長くやや先太り、しわのないものもある。 | 閉じる | 赤 | 無し。 | 多 | 無裂~浅い3裂。若枝や葉裏に粉吹き感。 |
コジキイチゴ | 白色。複数花ずつ。しわ少なくしゃもじ形。雌蕊が楕円形に飛び出し目立つ。 | 無変化 | 橙 | 長く赤い毛が非常に多い。 | 多 | 1~4対の羽状複葉。かなりしなだれる。 |
ナワシロイチゴ | 桃色。複数花ずつ。花弁は開かない。しわなし。 | 閉じる | 赤 | 白い毛が多い。 | 多 | 単葉か1~2対の羽状複葉。匍匐性。 |
クサイチゴ | 白色。1~複数花。花弁は180°開き、しわあり。 | 無変化 | 赤 | 短い赤い毛が多い。 | 多 | 単葉か1~2対の羽状複葉。 |
カジイチゴ×コジキイチゴ | 白色。雌蕊の盛り上がった、ややスマートなカジイチゴ。小枝を伸ばし時に枝分かれし、先に複数花。 | 無変化 | 橙 | 赤い毛が多い。 | 多 | 歯抜けで非常に実着き悪い。1対の羽状複葉。頂葉が3裂、側葉が2裂。最大7小葉になる。頂葉は3裂が過ぎて1対羽状に見えることもある。葉身細く、小葉どうし重ならない。 |
コジキイチゴ×カジイチゴ | 同上。 | 無変化 | 橙 | 赤い毛が多い。 | 多 | 歯抜けで実着き悪い。葉は同上。 |
カジイチゴ×モミジイチゴ(トゲナシイチゴなど) | 白色。しわの多い、花弁の大ぶりなモミジイチゴ。小枝を伸ばし葉腋ごとに1花ずつ、複数花。 | 無変化 | 橙 | 無し。 | 少~多 | 受粉せず~歯抜け。葉は株ごとの変化大きい。矮小種も発生。F2も雑種様。 |
モミジイチゴ×カジイチゴ | 採種できず。 | |||||
【カジイチゴ×ニガイチゴ】(ヒメカジイチゴ) | 白色。しわの多い、花弁太めな大ぶりのニガイチゴ。小枝の先に1~3花。 | 閉じる | 赤 | 無し。 | 少 | 実着き良。無裂~5裂葉。F2はニガイチゴ様。 |
【カジイチゴ×クサイチゴ】(トヨラクサイチゴ) | 白色。大振りなクサイチゴ。 | 無変化 | 赤 | 多い。 | 少 | 歯抜けで実着き悪い。葉は、3出もしくは1対羽状で、頂葉が3裂、基部小葉が2裂。F2も雑種。一部に実着きのいい株発生。 |
カジイチゴ×ナワシロイチゴ | 採種困難。発芽率も悪く、本葉2枚程度で枯死。 | |||||
ナワシロイチゴ×カジイチゴ | 採種できず。 |
雑種はおおむね中間的な特徴になる。中間的のなかでも、カジモミジのように、株ごとの振れ幅の大きいものもある。
単葉のカジイチゴと羽状複葉の種が混じると、ブラックベリー系のような葉になる。ブラックベリーは頂葉は割れないが、雑種はここも3小葉に割れることがある。
優劣がありそうな部分もある。実の色は、あきらかに赤が優性、橙が劣性。受粉後の萼の動きは「閉鎖」が優性。毛の有無は「無し」が強そう。
雑種の子は、雑種のままの場合と、方親に戻る(寄る)場合とがある。確実に自家受粉させたものではないので、戻り交雑などで親に近くなった可能性も無くはないが、複数株で確認している。
ニガイチゴ
【 和名、学名の出典等について 】
- 標準和名や学名は、基本的に「YList」ページを採用する。
- Ylistに掲載のないものは、 Wikipediaの「キイチゴ属」ページのものを使う。これには「※」を付す。
- 交雑種は、種レベルの扱いがあり特に著名と判断したものはそれを使う。それ以外は独自名を付す。和名は両親から「イチゴ」を取った合成名、学名は両親を「×」でつないで連名とする。いずれも母体を先頭にする。
- 例:カジイチゴ(R. trifidus)を母体にコジキイチゴ(R. sumatranus)の花粉を付けたもの → カジコジキ(R. trifidus × R. sumatranus)
- 雑種は、入手個体を「F1」とみなす。特に必要がなければ「F1」とは記載しない。その子は「F2」となる。たとえばファールゴールドの実生は、「ラズベリー・ファールゴールドF2」と記す。
- 同種が複数株ある場合は、和名の後に番号を付す。従前1株だったものは、それを#1とする。
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