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2016/6/5 発見時の様子
左:クマ、右:ミヤマニガクマ(仮)

左個体の頂部と幹

右個体の頂部と幹

左:クマ
右:ミヤマニガクマ(仮)
神坂峠のミヤマニガクマ(仮)に関するリクエストがあったのでまとめておく。

「ミヤマニガクマ(仮)」とは、昨年6月に岐阜県神坂峠で見出した個体のこと。
ニガイチゴRubus microphyllusとクマイチゴR. crataegifoliusの両方の影響がありそうだが、その近辺はおおむねミヤマニガイチゴR. subcrataegifoliusの領域。ミヤマニガイチゴの雑種報告も見られないため、ニガクマイチゴR. × nigakumaに倣って、仮の名としてミヤマニガクマイチゴとしたもの。

4枚の写真はすべて、2016年6月5日の神坂峠でのもの。草刈りされた広場の隅に生え、日あたりは悪くない。このコンビは、停めた車の真後ろにいた。
生育地での第一印象は、軟弱なクマイチゴ。格好は間違いなくクマイチゴなのに、毛も斑模様もなく、棘も少なめでおとなしい。


5/28 今年枝の葉

5/2 花(横)

5/2 花(正面)

5/28 若実

6/26 完熟

6/26 完熟(2)

2016/7/31
ミヤマモミジイチゴ若実@神坂峠

栽培、観察してみた。

この個体は、ニガイチゴのように茎に白い粉を吹くことはない。黄緑色の茎で生え、徐々に色が着いてきて、年を越すころには赤褐色になる。
ミヤマニガイチゴは白く吹くことが多い。半分ニガイチゴの入ったヒメカジイチゴR. × mediusも多少は吹く。

葉裏は、白っぽいといえば白っぽいかもしれない、というレベル。たいして白くないヒメカジイチゴよりも白くない。手持ちのミヤマニガイチゴも、あまり白くはない。

花自体はニガイチゴに似るが、着き方はクマイチゴ様。幼果は、緩めながら萼を閉じる。
完熟果の粒の形状は、クマイチゴっぽく尖るものもある。一方で完熟(2)のように、まったく尖らないものもある。自生地近隣に生えていた、ミヤマモミジイチゴR. pseudoacerにも似る。

熟した実が少なく、その構成する粒もまた少なかったので、萼の動きや粒の形状に影響しているかもしれない。


日本の野生植物・木本
左の画像は、平凡社の写真図鑑、「日本の野生植物 木本」のミヤマニガイチゴのページ。左から上高地、乗鞍高原での撮影とのこと。

株も環境も違うとはいえ、それにしても違い過ぎないだろうか。果実の方は、よく見るミヤマニガイチゴそのもの。しかし花の写真は、ここで取り上げたミヤマニガクマ(仮)に近い気がする。フィールドで両者を見つけても、同種とは判断できなさそう。

逆に、ミヤマニガイチゴの変異の幅が相当に大きいのかもしれない。
粉を吹かないのも範疇、クマイチゴっぽい形状も範疇、となると、さんざん熱を入れて観察したこの個体も「ミヤマニガイチゴでした、ざんねーん!!」という可能性も……




【 和名、学名の出典等について 】
  • 標準和名や学名は、基本的に「YList」ページを採用する。
  • Ylistに掲載のないものは、 Wikipediaの「キイチゴ属」ページのものを使う。これには「※」を付す。
  • 交雑種は、種レベルの扱いがあり特に著名と判断したものはそれを使う。それ以外は独自名を付す。和名は両親から「イチゴ」を取った合成名、学名は両親を「×」でつないで連名とする。いずれも母体を先頭にする。
    • 例:カジイチゴR. trifidusを母体にコジキイチゴR. sumatranusの花粉を付けたもの → カジコジキR. trifidus × R. sumatranus
  • 雑種は、入手個体を「F1」とみなす。特に必要がなければ「F1」とは記載しない。その子は「F2」となる。たとえばファールゴールドの実生は、「ラズベリー・ファールゴールドF2」と記す。
  • 同種が複数株ある場合は、和名の後に番号を付す。従前1株だったものは、それを#1とする。

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