ひと月前の新聞ネタだが、抗がん剤を体内で合成、などという記事があった。無毒の抗癌剤の原料を体内に入れ、癌細胞のところで合成して効果を出させるという。
最近目を引く癌治療といえば、オプジーボ(Wikipedia)をはじめとする免疫を復活させる(癌が免疫をやり過ごすのを阻害し、自分の免疫で癌を叩く)もの、iPSを使ったステルスファイターT細胞(CiRA)(癌を叩く免疫細胞そのものを大量に作って投入)などがある。
今回のネタは、従来からある化学療法、抗癌剤の延長にあるもので、効くんだけど副作用が強い、なら副作用を取ってしまえ、というもの。
体内でベンゼン環を作る
-薬剤の構造に含まれるベンゼン環を体内合成してがん治療- (2022/1/10)
新聞にあったのはこのネタ。
従来の抗癌剤は、細胞の増殖等に害を与えるので、癌細胞に効く一方で正常な細胞にも影響がある。正常な細胞には触れないようにしたい。
抗癌剤には通常、ベンゼン環が含まれる。そこをバラして無害な原材料の状態にする。ベンゼン環は触媒によって合成ができる。触媒には、失活しないよう、癌細胞にくっつくよう、もちろん無害なように細工がしてある。原材料と触媒とを別々に投与すると、癌細胞に触媒がつき、そこで抗癌剤が生成され、癌が死ぬ。
将来的には、ベンゼン環だけでなくさまざまな分子の合成ができると期待される。
世界初のマウス体内におけるタギング治療
-体内での金属触媒反応による次世代がん治療戦略- (2021/4/24)
上記リリースの前段階として、抗癌剤を癌細胞にだけ届けよう、という話。
まずは同様の細工をした触媒を投与し癌細胞に着けておく。続けて癌細胞に親和性のある分子を付けた抗癌剤を投与する。癌細胞表面では、触媒により抗癌剤が癌細胞に取り付き効果を発揮する。
このリリースには、触媒、抗癌剤、の順で投与とある。上記リリースにはその記述は無いが、同様に行っていると思われる。
体内での環化付加反応によるがん化学療法
-アクロレインを利用した反応で副作用をなくすことに成功- (2021/3/31)
同時期に発表された、触媒を使わない方法。
ほとんどの癌細胞には、アクロレインという物質が大量に生成されている。これを利用し、癌細胞を蛍光標識して数分で見分ける方法などが開発されている。
このリリースは、蛍光標識の代わりに抗癌剤を用いる。細工をし無毒化した状態で投与し、癌細胞に着いてアクロレインと反応することで有効な抗癌剤に変化する。このような薬をプロドラッグと呼ぶ。
これにより副作用が減ることが期待できる。マウス実験では、未処置相当では癌のために32日で全滅、抗癌剤投与では癌は小さくなるも副作用のために10日で全滅。プロドラッグ抗癌剤を使うと、癌は小さくなり2ヶ月経っても全て生存、という華々しい結果が得られている。
かつては、死をはっきり覚悟した癌宣告。患者に癌診断を告知をするか否かで大もめした時代もあった。
いずれは日帰りの抗癌剤注射で済むような日が来るのかもしれない。
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