いたるところに蔓延るクサイチゴ(Rubus hirsutus)や、その孫のニシムラキイチゴ(R. nishimuranus)あたりは、熟し始めている。特に後者はヒヨが味を覚えたようで、完熟前に啄ばんでいくようになった。
カジイチゴ(R. trifidus)やモミジイチゴ(R. palmatus)も熟し、ニガイチゴ(R. microphyllus)やクマイチゴ(R. crataegifolius)あたりは、GW中に色づくものも出てきそう。
ひさびさにハスノハイチゴ(R. peltatus)も咲いたが、3花は雌蕊が育たず。残り1蕾もサイズ的に同様のよう。別株に着いた蕾はさらに小さく、今年の実りはなさそう。冬の間に、みっしり着いたカイガラムシをこそぎ落とした株もあったが、幹は生きているようだが芽吹きはなかった。
暑さと乾燥で弱って、カイガラムシで幹が、ハダニで葉がやられ、ウドンコと枯れ込みで気づいた時には手遅れ。元気のいい状態で冬を迎えないといけないが、酷暑の浜松市平地ではなかなか大変。
先日の記事で自家受粉実験をしていたキミノニガイチゴ(R. microphyllus f. miyakei)。結果は全て受粉せず。自家受粉はしない、自家不和合性アリ……といきたいところだが、じつは比較対象として行っていた他家受粉も上手くいかなかった。手技が拙かったのか、株が若すぎたのか、環境の変化が響いたか、いずれにせよ再実験が必要。
ちなみにニシムラキイチゴ(ハチジョウクサイチゴ)は、自家受粉できる。自家他花はもちろん、何もしなくても勝手に身が入る。雑種由来なので個体差が大きい可能性はあるが、ともかく手元の株は実が生った。
キミノニガモミジ(R. microphyllus f. miyakei × R. palmatus)。'20と'21播種分が育っているが、'20株がいくつか若実を着けた。しっかり窄んでいる。葉茎の姿も花の様子も、どこをどう見てもニガイチゴ。それも黄実ではなさそう。開花後の施術なのでコンタミしたか、若しくは自家受粉でも赤実になるのか。前記実験が失敗したため答が出ない。複数株あるはずなので、いましばらくは様子見。
ミヤマニガクマ(仮)の再現を試みた、クマミヤマニガ(R. crataegifolius × R. subcrataegifolius)も若実までこぎつけている。'20に、2粒だけ実が入り、うち1粒が育ったもの。
葉、茎、新芽などの様子はミヤマニガのようだが、葉裏や茎を白ませる蝋物質は無い。茎、葉の裏表などにいくらか産毛があり、大きな葉は5裂してクマ風になる。花はクマイチゴ似。若実はほとんど窄まず粒の形状もクマイチゴ風。花の着き方は中間的。ほぼ基部から単花もしくは複数花つけるニガとも、先端で直角に枝分かれしてまとまって咲くクマとも異なる。
シュートはやや這い性で、葉が出る度に茎が折れ曲がる。ただ、株が小さく勢いがないだけかもしれない。
同時にクマキミノニガ(R. crataegifolius × R. microphyllus f. miyakei)も作っていて、こちらも若実を着けた。もともとキミノニガは、裂が少ないゆったりした葉で花も大ぶり。雑種もその血を受け継いだ感じ。若実は窄むが、実が大きすぎて包みきれない状態。シュートはどちらかといえばクマに近いか。直立性でニガクマとして採種した株とほぼ同じ。
カジビロード(R. trifidus × R. corchorifolius)は'21と'22播種分がある。後者には複数株あり、いずれも似た形状なのでバラエティは無さそう。シュートが徐々に伸びだしたので、おそらく来年は花が見られるはず。
カジイチゴの実生幼苗は裂が少ないが、それに似る。葉面は薄っすら毛が生え、テリもある。ただし、少なめではあるがトゲがある。また、カジイチゴの場合はシュートに生える毛は明らかに赤いが、この雑種はうっすらと白い毛が生えるのみ。
ちょうどこのきなんのき(WebArchive)で問われた株に似てる気もしないでもないが、毛の様子が微妙かも。
【 和名、学名の出典等について 】
- 標準和名や学名は、基本的に「YList」ページを採用する。
- Ylistに掲載のないものは、 Wikipediaの「キイチゴ属」ページのものを使う。これには「※」を付す。
- 交雑種名は、特に著名と判断したものはそれを使う。それ以外は独自名を付す。和名は両親から「イチゴ」を取った合成名、学名は両親を「×」でつないで連名とする。いずれも母体を先頭にする。
- 例:カジイチゴ(R. trifidus)を母体にコジキイチゴ(R. sumatranus)の花粉を付けたもの → カジコジキ(R. trifidus × R. sumatranus)
- 雑種は、入手個体を「F1」とみなす。特に必要がなければ「F1」とは記載しない。その子は「F2」となる。たとえばファールゴールドの実生は、「ラズベリー・ファールゴールドF2」と記す。
- 同種が複数株あって区別を要する場合は、和名の後に#番号を付す。従前1株だったものは、それを#1とする。株分けなど栄養繁殖個体は-番号を付し、#1-1などとする。
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