かの牧野富太郎氏をモデルにした、朝ドラ「らんまん」。浜辺美波の圧倒的なかわいさばかりが印象に残っているが、そういえばクロイチゴを間違って同定しているシーンがあった。
第22週の冒頭、責任者の院生がエビガライチゴと断定したところへ、万太郎が横槍を入れている。
ふと思ったのがその呼称。明治26年の東大において、「エビガライチゴ」と呼んでいたか「ウラジロイチゴ」としていたか。フィクションに突っ込んでも詮無いことではあるが少し掘ってみた。
ちなみに、平凡社の「日本の野生植物 木本(1993/平成5/昭和68)」や六月社の「日本樹木総検索誌(1961/昭和36)」では後者を採用している。教科書が平凡社のこの写真図鑑だったので、個人的にはウラジロイチゴで覚えていた。
国立国会図書館デジタルコレクションなどで古い書籍を当たってみる
徳永教授のモデルである松村任三氏の著作物では、
- 日本植物名彙(1884/明治17)https://dl.ndl.go.jp/pid/832586/1/89 ウラジロイチゴが先頭
- 日光山植物目録(1894/明治27)https://dl.ndl.go.jp/pid/832574/1/26 ウラジロイチゴのみ記載
- 改正増補 植物名彙 (1895/明治28)https://dl.ndl.go.jp/pid/832524/1/165 ウラジロイチゴが先頭
- 帝国植物名鑑 下巻後編(1912/明治45)https://dl.ndl.go.jp/pid/991366/1/122 エビガライチゴが先頭
- 日本植物総覧(1925/大正14)https://dl.ndl.go.jp/pid/1017952/1/440 ウラジロイチゴ先頭
- 牧野日本植物圖鑑(1940/昭和15初版、1957/昭和32年 廿九版)浜松市図書館蔵 エビガライチゴ先頭
- 牧野新日本植物圖鑑(1961/昭和36初版、1980/昭和55 37版)浜松市図書館蔵 エビガライチゴ先頭
「APG牧野植物図鑑」でもエビガライチゴを標準和名として扱っている。
その他の図鑑としては、
- 植物圖鑑(牧野校訂、1908/明治41)https://dl.ndl.go.jp/pid/832504/1/576 エビガライチゴ先頭
- 大植物圖鑑(1925/大正14)https://dl.ndl.go.jp/pid/2387662/1/313 ウラジロイチゴ先頭
当初はウラジロイチゴであり、根強いウラジロ派はいるものの、明治の終わりごろからエビガライチゴに置き換わりつつあるように見える。
ちなみに「いちごいろいろ-地方名総覧-(2022)」によれば、2018年の発行文献もウラジロ派らしい。
ともあれ、やはりエビガラとは言ってない気がする。
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