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NEW KEYS OF JAPANESE TREES
日本樹木総検索誌(初版本)
日本樹木総検索誌(NEW KEYS OF JAPANESE TREES、六月社版、杉本順一著)を買ってみた。

1961年(昭和36年)の初版本で、定価は1200円。消費者物価指数を勘案すれば今の6000円ぐらいか。日本の野生植物・フィールド版あたりの、一般向け植物図鑑的な位置づけと想像する。
基本的な葉や花の形などが巻頭にまとめられているが、それ以外の図版は無い。よくある植物図鑑の、分類および説明の部分のみの形。

古書はアマゾンでも買えるが、「日本の古本屋」ページで検索した方が候補は多い。おかげで、送料込みで定価以下で手に入った。
箱傷みやヤケなど経年劣化はあるものの、大事に扱われていたとみえて中身はきれい。

ヒメクマイチゴなど、ここのところクマイチゴ関連ネタが増えてきている。
ミヤマニガクマ(仮)の(仮)を取るヒントがないかと当たっている中で、引っかかったワードが「メクマイチゴ」。メ(女)と付くからには、棘がない、毛がない、やわい、などを連想する。
ミヤマニガクマは、棘はあるけど毛は極少なく、深窓育ちのごとく軟弱なイメージ。脈ありかも。

Ylistで検索すると、メクマイチゴは2件ヒットする。
学名: Rubus crataegifolius Bunge var. inermis Honda
和名:  メクマイチゴ
学名ステイタス: シノニム →標準名へのリンク
文献情報(原記載文献など): B. M. T. 52: 517 (1938). Type: Akita (Ugo), Yatate (G.Koie 3, in 1937, TI).
科名: APG: Rosaceae(バラ科); クロンキスト: Rosaceae(バラ科); エングラー: Rosaceae(バラ科)
データ編集日: 2018.8.11
学名: Rubus crataegifolius Bunge f. inermis (Honda) Sugim.
和名:  メクマイチゴ
学名ステイタス: 標準
掲載図鑑とページ番号: (講談社・Flora of Japan)2b: 157;
文献情報(原記載文献など): New Keys Jap. Tr.: 471 (1961).
科名: APG: Rosaceae(バラ科); クロンキスト: Rosaceae(バラ科); エングラー: Rosaceae(バラ科)
データ編集日: 2018.8.11

データ編集日は2019.8.11のはずだが……それはともかく。後者が標準とされるが、初出は前者。
ここには植物の説明はないので、原典をあたることにする。

文献欄の、B.M.T.は、Botanical Magazine, Tokyoの略記で、当該記事はネットで見られる。
植物学雑誌 52巻622号p517-Nuntia ad Floram Japoniae. XXXVIなのだが、ラテン語か何かで書かれていてよく解らない。「Planta in toto inermis.」のたった1文が種の説明っぽい。
文献の略号については、「学名を解体する (3) | 広島の植物ノート 別冊」ページが詳しい。

Type:に続く部分は、タイプ標本といい、命名に当たって指定する基準標本になる。押し花にした実物が保存されている。
TIは、東大植物標本室のことらしい。「植物タイプ標本データベース(英語サイト) Type Collection Database」へ進み検索すると、標本もネットで見られる

後者にある文献、New Keys~は、垰田さんのページには無い。検索してみても、それらしき植物誌は出てこない。発行年や「植物誌」など追加し、画像検索もして、ようやく辿りついたのが冒頭の図鑑。
借りようと思ったのだが、地元の図書館はもちろん、国立国会図書館でOPAC検索してみても、初版のそれは出てこない。買うしかないか……


奥付
初版本。検印あり。

検索部
検索部は「階段状」。いまの図鑑と変わらない。

トゲナシキイチゴ付近
ちょっと横道。
カジモミジことトゲナシキイチゴには、これでもかと別名がたくさん書いてある。

「多型で多くのnothomorphaがある」とある。Google翻訳でも訳せないのだが、たぶん、変異が大きくバラエティに富むよ、という意味……ではないかな。
実際、オオモミジイチゴ的なものもあればトゲアリカジイチゴとかマメカジイチゴとかいう形態のものもある。

メクマイチゴ付近
目的のメクマイチゴの説明は、

 無刺.

以上。

本図鑑には、学名のお尻にアスタリスクが付いているものがある。
「~Sugim.*」とか「~Sugimoto*」となっており、これは著者の杉本氏が学名を変更したもの。上記Ylist結果を見ても判るように、変種(var.)から品種(f.)へ格下げしている。
花色や棘の有無などを品種レベルとみなすのは、現在も同じ。

学名の変更があったものは、巻末にまとめられている。Ylistにあるp471は、そこを指している。その変更に関する説明はp485にあり、種自体の解説はp203にある。
ちなみにp485には、メクマイチゴではなくトゲナシクマイチゴとある。分類をするような人なので、直截的な表現を好まれるのではないか、などと妄想した。

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