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日没@舞阪(遠州灘)

日没をカシバードで再現
どうしても少しズレる、カシバード(カシミールの鳥瞰機能)の日の出。昨年もあれこれ考えたが、とりあえずの結論しか出なかった。
先日、富士山よりさらに遠方の日没が撮れたので、ふたたび検証してみる。

冒頭のものは、遠州灘から紀伊半島に沈む夕日を撮影している様子。左脇に見える機材で映像を撮り、それを計測材料とする。
渥美半島の大山おおやま、鳥羽~伊勢の朝熊ヶ岳あさまがたけあたりは肉眼でも見える。


まずは、今回撮れた舞阪(遠州灘)の日没から。


日没1秒前

日没時のカシバード画像(加工あり)

日没時のカシバード画像(気差1.394)

海面から僅かに出た頂(矢印)が確認できる
撮影は、2015年2月16日、浜松市西区舞阪町より。f=900mm相当、距離は144km。

最初の画は、日没の瞬間を映像から切り出したもの。
ここに見える山並みは、三重県と奈良県の県境、台高山脈だいこうさんみゃくの一部。太陽のかかる富士山形の、向かって右肩のピークが、1380.3mの千石山。

2枚目、カシバード画像には手を加えてある。
下位蜃気楼(浮島現象)を表現するため、水平線上8px分を下へ反転コピーした。
また、太陽の位置を合わせるため、同じサイズの円を描いて移動させた。61px、約0.1°下げると、実測位置に合致する。使用ツールはMSPaint。

前回検証時には、大気差をいじる設定があるのを知らなかった。地上物に対する気差補正(地上大気差補正)は、地球半径を伸縮させることで実現している。
3枚目の画像は、山並みを太陽に合わせるために、気差を1.394に設定したもの。値は、千石山近辺各所での光の消えるタイミングから割り出した。
太陽と山とは合うが、海面がだいぶ下がり蜃気楼が描けない。ちなみに、1秒遅が気差0.01減程度に相当し、表示時刻は「1秒はズレない程度」の精度がある。

最後の1枚。太陽が半分ぐらい沈んだ画を見ると、矢印部分に「小さな黒い染み」が確認できる。これは、海面からわずかに出た山頂が浮島現象で点になったもの、と思われる。
2枚目の気差をいじらない画に合うので、前述の方法は旗色が悪い。気差はデフォルト(1.156)を基本に考えることにする。


次に、昨年のダイヤモンド富士(日出)のおさらい。


ダイヤモンド富士の日出位置(▲印)

ダイヤモンド富士カシバード画像(加工あり)

ダイヤモンド富士カシバード画像(気差1.75)
撮影は、2014年7月8日、浜松市天竜区春野町より。f=1400mm相当、距離は87.4km。

1枚目は、編集し直した映像からのキャプチャ。日の出の瞬間は富士山が見えないので、その位置に▲印を記す。

こちらもカシバード画像と比較してみる。
2枚目からは、74px=6.94′下げると実測に合うことが判る。日出時刻、その位置、剣ヶ峰をまたぐ瞬間などもぴったり合う。
3枚目は、気差補正で合わせ込んだもの。1.75にまでする必要がある。


以上の2例より、地球と天球とのズレではなく、太陽が本来より浮きすぎである、と想像できる。
浮き方の傾向を見るため、さらに近場への日没データも拾ってみることにする。


日没1秒前

日没時のカシバード画像(加工あり)

N/A
日没時のカシバード画像(気差-.--)
撮影は、2015年3月14日、浜松市北区大原町より。f=900mm相当、距離は23.1km。

山並みは、静岡県と愛知県との県境。以前行った富士見岩(415m)~廃寺跡あたり
日没ポイントは、372.5三角点の東から、南に伸びる支尾根の356m付近。

2枚目、太陽円を下方に移動する方法では、76px=7.13′で合致する。
3枚目、気差値での合わせこみは、地球をベテルギウス並(109000倍ぐらい)に膨らませてもダメだった。地球がほぼ地平になっているので、標高74mから見る23.1km先の356mは0.699°。カシバードは0.608+0.119=0.727°に日没光点を描くので沈まない。
なお、標準の気差値でも17:51:53には同じ位置に没するが、実際の日没時刻17:51:23とはかなり違うので正しくない。


その他、拾い出した数値をまとめておく。

撮影距離カシバード画像(気差補正値を変更)に対する実測の仰角差 ※1日出没時の太陽頂仰角 ※1※4日出没時の光点仰角 ※1※4同左の大気差 ※2※3備考
1.0001.0601.0981.1351.1561.3941.7501.09E5
144km-10.96875′(-117px)-8.8125′(-94px)-7.5′(-80px)-6.375′(-68px)-5.71875′(-61px)0′(0px)5.625′(+60px)27.84375′(+297px)-0.040625°-0.0625°35.3678′舞阪(遠州灘)での日没、一部は50km以遠のみ描画
87.4km-10.125′(-108px)-8.8125′(-94px)-8.0625′(-86px)-7.3125′(-78px)-6.9375′(-74px)-3.46875′(-37px)0′(0px)13.40625′(+143px)1.5328125°1.5328125°20.7476′ダイヤモンド富士(2014)
23.1km-8.0625′(-86px)-7.6875′(-82px)-7.5′(-80px)-7.3125′(-78px)-7.125′(-76px)-6.28125′(-67px)-5.34375′(-57px)-1.78125′(-19px)0.61875°0.6078125°27.7555′大原(三方原)での日没
※1 画像読み取りは、1px=0.09375'で計算。有効桁数は考えない。
※2 大気差は、「国立天文台暦計算室 こよみ用語解説 太陽や月などの運動」の計算式を使用。
※3 Wikipediaのリンク先などで計算すると、年間通した気圧、気温範囲で、2′程度は変化するらしい。
※4 気差1.156(標準値)でカシバード画像より読み取る。

以上の結果などからまとめると、
  • 地球は丸い(=球差がある)ので、そもそもの浮きすぎ量(気差1.000での値)は遠方の方が大きい。
  • 遠方の方が、地上大気差(カシミールでは「気差」)補正は効くので、デフォルト(気差1.156)での浮きすぎ量は小さくなる。
  • ある程度遠方であれば、気差補正で合わせこむこともできるが根本解決ではない。近距離では、それは不可能。
  • 位置関係のシビアな金環日食が再現できるので、天体同士の相対精度は高い。
  • 日出没時刻での方位角は正確なので、天体の位置精度はおそらく高い。
ということで、太陽の大気差(天体大気差)補正が過剰、と予想する。
標準状態での差は0.1°前後だが、視直径に対しては1/5に相当する。これだけでも出没位置はだいぶ変わるので、ベイリービーズ状態を狙うには精度が足らない。
ただ、一律にいくら下げれば良い、というわけでもないところがややこしい。気差を変える=大気の屈折率が変わる、であるのに、天体の位置は変わらない。このへんが絡んでいるのかもしれない。


「予想」の補強になりそうな事例も挙げておく。

以前にも使わせてもらった、森住氏によるダイヤモンド富士でも確認してみる。他人による別機材での撮影であり、またかなり遠方の写真。
日没途中のためシビアな読み取りはできないが、太陽が1/5ずれていれば雰囲気で判りそう。


森住さんの写真に補助線を引く

カシバード画像を加工

カシバード画像(気差1.35)
森住氏のサイトから借りるのは、2002年1月28日の霞ヶ浦越しの写真。撮影地は行方市富田、富士山までは174km余。

まず、水平線で写真の水平を確認し、太陽中心線と富士山頂との位置関係で、方位角を読み取る。
そしてカシバードで、記載の時刻のころを表示し、方位角が合う時刻を得る。前述らと同様に、画像と写真とを見比べながら太陽位置を下げてみる。

撮影時刻は16:56とあるが、16:55:25あたりが合う。太陽円も、0.1°ほど下げたい。
気差設定値を1.35とした画像も並べておく。舞阪の日没より遠方のせいか、気差値もやや小さめで合う感じ。


もう一例、2011年のダイヤモンド富士でも見てみる。


2011年ダイヤモンド富士(f=135mm相当)

2011年ダイヤモンド富士(気差1.75)

2011年ダイヤモンド富士(気差1.156)
2011年6月30日のダイヤモンド富士。浜松市天竜区春野町より。135mm相当で撮影。富士山までは89km。2014年とは別の場所。
デジカメ手動撮影なので、時刻や日出位置は正確には判らない。右側がまず光り、光度が増す。すぐにその左でもう一点光り、そこを撮影した。
光点の形状から、右側の山腹が日の出位置と思われる。

前例に倣えば、74px下げて円を描くか、気差を1.75に変更するかで実測に合うはず。後者で試すと、4:47:35ごろ、ちょうどいい頃合に2点が光る。
標準値の1.156では、剣ヶ峰をまたぐ形になり合致しない。


以下に、計測の元とした映像を付す。
舞阪(遠州灘)での日没、ダイヤモンド富士(2014)の日出、大原(三方原)での日没、の3本。

ダイヤモンド富士は、以前の記事のとおり、1400mm相当、それ以外は900mm相当での撮影。
カメラは、ケンコー製DVS2500HDを使用。光学固定焦点パンフォーカスで、f=45mm相当。レンズは外れないので、コリメート撮影とする。
コリメート接続する相手方は、1400mm時は、ビクセン製スーパーハレーSR-1000(D=100mm、f=1000mm)。これにEr.32mmを着け、31倍とする。
900mm時は、トミー製ファミスコ60S(D=60mm、f=400mm)にK.20mmを着け、20倍とする。

映像には、同ファイル内にGPSロガーの時計も映しこんでおく。あとからAviUtlで、編集も兼ねて日時を焼きこむ。誤差は1秒以内。


2015/2/16 紀伊半島への日没@舞阪(遠州灘)
以前のダイヤモンド富士による検証では、太陽が浮いているのか、天球が西にズレているのか判らなかった。判断のため、反対方向の日没を撮ることにする。精度を上げたいので、なるべく遠方を狙う。
当初はスーパー林道周辺を探したが、山並みは40km台がせいぜい。山に登れば100km超も可能だが、見えるとも限らないイベントで通うのはつらい。逆に浜へ出れば、遠州灘から紀伊半島が見えることが判った。

冬は晴天が多く、車で行ける場所でもある。楽勝かと思いきや意外とてこずった。
西高東低の空っ風の日は、浜松はよく晴れる。ところが伊勢湾、紀伊半島には、琵琶湖あたりを越えてきた風で雲がかかるよう。雲か、山か、という仰角1°そこそこの雲に遮られることも複数回あった。結局、20日がかりの大仕事。

撮影設定は、-2.0EV以外は標準値。日没間際には、0EVに切り替えている。17:32:54日没。

太陽は、17:30:20ごろに海面に接する。このとき、下に流れ落ちるように伸びる。その後17:30:36ごろまで、Ω形(右半分)に見える。世間ではこれを「だるま太陽」などと呼ぶらしい。
だるま太陽も、ちょこっと出た山頂が浮島に見えるのも、山並みの下に太陽が入り込むのも、下位蜃気楼による現象。逃げ水と同じように、鏡に映ったように見える。


2014/7/8 ダイヤモンド富士@天竜スーパー林道
昨年のダイヤモンド富士映像を編集しなおしたもの。後のチェックで、0.5秒ほど時刻のズレがあることが判ったので修正した。

日の出の瞬間には、富士山自体は見えないので、そのポイントに▲を付してある。
バックではウグイスが合唱している。4:51:23日出。


2015/3/14 日没@大原(三方原)
比較的近場を狙った日没。

生えている木々の影響が少なく、かつダイヤモンド富士より十分近距離なことを考えあわせると、20km~40kmあたりが妥当だろうと見当を付ける。
スーパー林道からの山並みは40km程度。ちょうどよさそうだが、いまは冬季閉鎖中。山並みの起伏が比較的緩い印象もある。平坦地に沈まれては位置計測が難しい。

ふと見渡せば、適度に凸凹な県境尾根が見える。天竜川や磐田原大地からなら30km超、三方原大地の東端からなら20km余ある。アクセスを考え後者にする。
三方原大地では、馬鈴薯や大根が一大勢力を持っている。おかげで各所で山並みは見通せるものの、防風林や建物により途切れ途切れになっている。対象が近いので、通り一本の移動で山ひとつズレてしまう。障害物と日没位置とを精査する必要があり、意外と面倒だった。

撮影は-2.0EVで始める。日没近くで-1.0EVに、間際で0EVに切り替えた。17:51:23日没。


最後に、検証に際し、いくつか気づいた点があったので挙げておく。
画角(写角)が細かく設定できない
画角は度単位の設定のため、望遠側がかなりさみしい。500mm超は、642mm、963mm、1926mmの3つだけ。焦点距離を合わせるには、画像保存後に切り出すしかない。もうひと桁、細かく設定したい。
蜃気楼が描けない
下位蜃気楼は普通に見られる現象らしい。簡易でいいので描くオプションがあるとうれしい。
カシバード画像に年月日がない
太陽を描けば時刻は表示される。細かな位置情報や標高や、あまり気にしない偏角まであるのに、年月日がない。
カシバードのプレビューを強力にしてほしい
PCの性能はどんどん上がるので、プレビューもパワーアップしてほしい。もう少し遠方まで描いたり、特定の山を常に表示したり。見通せるか否かはともかく、近景と100km先の富士山とのバランスをグリグリ動かして調整、のようなこともしたい。
2015/5/11追記 : 代替機能として、目標を設定する際に「目標を固定する」にチェックを入れることで、カシバード位置を移動しても常に目標に向わせる設定が可能、とのこと。
地図に切り替えて撮影すると、なぜか海面が上がる
撮影場所を特定するために、[最新]の空中写真を表示し、位置を決めてカシバードを起動。その後、ウォッちずなどの*.matに切り替えて撮影すると、海面が数分上がってしまう。カシミール上でカシバードの位置を再設定する必要がある。
改善されれば嬉しいのだが……
なお、この記事ではVer 9.1.5を使用した。

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