日経新聞2007年8月27日朝刊5面
[インタビュー領空侵犯]
「弱者こそ正義」脱却を ソフトブレーン創業者 宋 文洲氏
清貧思想捨て活力再び
――格差社会が議論されていますが、社会主義の中国出身ながら、格差は容認すべきだとお考えだそうですが。
「格差の議論は戦後の成長時代に定着した一億総中流意識との対比で語られていると思うんです。頑張れば皆、同じ結果が得られる。復興政策で皆が豊かになったから、平等は普遍的と考えがちですが、資本主義経済は本来そういうものではありません」
――格差の議論がおかしいと感じるのはなぜですか。
「テレビのお茶の間番組はホリエモンや村上世彰被告らをヤリ玉に挙げ、格差社会の悪い印象のように取り上げます。違法行為はもちろん許せませんが、ベンチャーで成功した人へのやっかみも半分あるのではないでしょうか」
「資本主義の原動力は成長です。ベンチャーやイノベーションは欠かせません。そこで格差が生じるのは自然なことです。マルクスが富の再配分が必要と言ったのは、資本主義には格差がつきものだと見ていたからです。リスクをとった人をたたき過ぎれば、誰もとらなくなります」
――不祥事での役員報酬返上も変だと言っています。
「経営者が頭を下げる様子が連日報道される国は珍しい。報酬返上も紋切り型で、返金すれば放免されるというのも変な話です。経営責任が昔より厳しく問われる今、自覚を求める意味でも報酬はもっと増やすべきでしょう」
――なぜ日本は格差が問題になるのでしょうか。
「日本の平等は与えられたものだからです。努力しない人まで平等を主張する。さらに日本に根強い清貧の発想。正しい人は貧しくても清く生きるというのが、いつの間にか貧しい方が清く、弱者の方が正義になってしまった。役所もマスコミもそうした論調には逆らえず、まるで中国の文化大革命のようです」
「だから大事故が起きれば全国の回転ドアや遊園地が止まってしまう。過剰反応です。経営者も小心になり、無難を求めた結果、日本経済の活力が失われてしまった」
「中国が社会主義をとったのは経済を底上げするのによかったから。ロシアもそう。しかし途中から修正しました。中国政府だって気付いたのに、日本はいまだに復興型経済を貫こうとしています」
「清貧でなく、“清富”を賞賛すべきです。成果が報われる社会をつくらないと優秀な人は海外へ行ってしまい、海外からも有能な人材を起用できません。格差を前向きに受けとめ、弊害は福祉など別な方法で解決すべきです」
[聞き手から]
「日本タブー多過ぎよ」と軽快な口調で日本社会の閉鎖性を次々と指摘、経営者にもファンが多い。「同じことを日本の若造が言ったら怒られるでしょ」。外国人の立場をフルに活用し、耳障りな忠告をあえて発する。自ら経営者を退き、経営指導に専念するのは、彼しか言えないことを言うためだったようだ。
[もうひと言]
中国に言論の自由はないが日本よりずっと自由に発言している。
「格差」の議論がにぎやかになったのは、先の参院選で民主が勝ったから。民主が勝ったのは、安倍政権が仲良しクラブで脳内お花畑政権であったため。選挙前である緊張感もまるでナシ。決して民主の政策が支持されたわけじゃない。「子ども」と「動物」と「人の不幸」で食ってるワイドショーは、そこらへんを意図的に勘違いしてる気がする。
そこへ来てタイミングの悪いことに、政争大好き小沢が党首になってしまった。ともかく対立軸を作らねばならない。与党を叩き、党勢拡大することが第一。世界の目なんかどうでもいい。さらに悪いことに、数がほしいからと国民新党を取り込んでしまった。いつの時代の自民党を目指す気だ。
民主に入れてよかったんだろうか……
(敬称略)
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