2ヶ月ぶりに再び白倉川へ出向いてみた。
水窪街中まで1時間余、そこから大嵐(おおぞれ)まで細い舗装道路を30分、さらにダートで駐車場まで20分ほど。意外とかかる。
水窪川沿いに車をやりながら、今回はあちこちを眺めていく。
標高400mほどのところで、山側斜面にアマヅルの群落。もともと葉の変化に富む種で、大きく切れ込んでキレハノブドウ風、三角形やハート型、3裂などいろいろある。が、星型の葉は初めて見た。残念ながら実りは確認できず。
……と信じて疑わなかったが、これはツヅラフジだったようだ。低地で普通のアオツヅラフジとは、雰囲気がぜんぜん違う。
林道白倉線へ入ると、前回は遠目にしか見られなかったサルオガセが、沢沿いの植樹にも結構見つかった。知らなければ気根でも生えたかと勘違いしそう。沢の風にそよいでいる。
手触りは、干からびた根っこ。
これを食うというネット情報もあるが、その気は起きない。
若いのとか拡大とか。
川沿いの荒れ地には、フジアザミが満開。
何度見ても「食べ応えのありそうなレタス」に見えてしまう。その気になって触ると、硬く鋭い鋸歯に拒絶され血を見るのだが……でもいつか食ってみよう。
振り返ると、こんもり茂った葉の中にたわわなサルナシ……ではなくナシ。
畑が放置されたもののよう。近くの車庫には、フロンテハッチの廃車が「埃」高く眠っていた。20年ぐらい前までは営農していたか。摘果してないとこんなにも生る。遠目には大振りなサルナシにも見えた。
ひとつ齧ってみたかったが、山の実りの例に倣って、手の届く範囲だけには生っていない。
川沿いのトチノキの巨木。
周辺は重機で整地され、この樹だけ無理やり残されたよう。なんとなく痛々しい雰囲気。この地に生を受けて幾百年。この状況に何を想う。
身を削りつつ、アケビやサルノコシカケにも宿を貸している。
マタタビがオレンジ色に熟し始めていた。
時期的に遅いが、木天蓼があるか探してみた。やや変形しかけた実もあったが、割ってみたら単に種の入りが悪いだけだった。前回、木天蓼が生っていた木は、すでにすべて落ちていた。
寄り道が過ぎ、昼過ぎまでかかってやっと駐車場に着く。天気は素晴らしく良い。
とりあえず右端の尖ったところ、西俣沢の折り返しまでは行きたいが、約7km。あれこれ見ながらだとだいぶ厳しい。ともかく早足で行く。
ミツバアケビが割れ始め。
ぱっくり割れたほうが見栄えはいいが、持ち帰るには割れ始めぐらいがちょうどいい。中はちゃんと空洞になり、甘く熟している。
駐車場の先は、すぐに車両通行止め。
登山ポスト、登山者心得、発破作業中注意、一般車両通行止め、などなど看板多数。水窪川起点の標識もここにある。
前回初見だったミツデカエデやメグスリノキ、そしてチドリノキなどは、結構あちこちに生えていた。
チドリノキは、大振りで格好のいい翼果をさりげなく。
一方でホソエカエデは徹底的な物量作戦。
黒沢橋の手前に、木製の小振りな吊り橋がある。なんとなく渡ってみようと、腐っていないか確認しつつ、揺れにビクつきながら歩を進める。が、半ばで主に止められ、しかたなく引き返す。
カツラが、ところどころ黄葉を始めている。
樹下を歩くと、やや植物性の雰囲気のあるカラメルの香り。梅雨時のホオノキのような、匂いの塊に頭を突っ込んだようなそれとは違う、さりげないさわやかな心地よさ。
ヌルデが、真っ白に粉を吹いた実をつけていた。
粉のように見えても、実際は油分を含んで少しべとつく。白い正体は、リンゴ酸カルシウムの結晶とのこと。舐めてみると、柔らかいしょっぱさと程よい酸っぱさ。なんとなく旨みも感じられる。ウルシの仲間であることを忘れて、何度もお代わりをしてしまった。歩き疲れた体には、イタドリ以上に美味く感じられる。
立派な鉄骨の黒沢橋の袂でシカに出くわす。しばらく睨み合ったのち、白いハートの尻を見せて悠々と走り去った。
考えてみると、このへんの山で出会う哺乳動物はシカばかり。クマでもタヌキでもイノシシでもなくシカ。警戒しつつも意外とフレンドリーなのか。ときどきコウモリも飛んではいるが。
よく見かける木。バッコヤナギとのこと。
表は特に特徴のない緑の葉だが、裏は白い毛で覆われる。葉柄や芽は、透明感のある黄緑色でプラスチックのよう。
樹皮は縦に裂けるが、菱目模様が出ることもある。
これはアワブキ。
ビワのような大きな葉で、高木。赤い実を大量に着けている。小振りな樹も見られた。
時間が急かし、前回見つけたミヤママタタビは見つけられず。5.5km付近の谷底の工事現場からは、祝日にもかかわらず斫り音が聞こえる。現場を越えると、とたんに道が悪くなる。落石、土砂崩れが酷い。4輪ではちょっと怖い。このあたりで東西の俣沢が別れる。
その先には、ヤマブドウの大群落。谷底までの崖にこんもり。どうやっても行けない。
源流のひとつの西俣沢。水量は多めで傾斜もきつめ。元気のいい沢。左岸を行くと、このすぐ先が折り返し地点。白い欄干の味気ない橋がある。対岸には、折り返した道も見える。
この時点で既に16:00。6km/hなら1時間強、暗くなるまでに車まで戻れるか……などと計算しながら急ぎ折り返す。
途中、変わったサルナシを見つける。
機械的にすら感じられる、整った卵形、きれいに揃った平行な葉脈。緑の葉に真っ赤な葉柄。黒く焦げたような蔓。調べてみると、クマヤナギらしい。実は生っていなかった。
駐車場に付く頃には既に薄暗く、際どいタイミングだった。途中、谷底で斫っていた業者らの車に抜かれる。山で歩いている人に会うと、たいてい一声二声かけあうものだが、一目もくれず。
そんなもんか……。
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