since 2007.8 by K-ichi

キイチゴが盛り。
栽培しているものなどの現況を並べてみる。基本的に、8号菊鉢に赤玉+腐葉土を使い、無農薬無肥料で栽培している。


エビガライチゴ
天竜スーパー林道北部では、日当たりのいい路傍によく見られる。里山では見られない。
半蔓性。白っぽい大きな棘と赤く密生した毛が特徴。3出羽状複葉で、葉裏はくも毛が密生し白い。ウラジロイチゴの別名もある。地下茎では増えず、春先に一箇所から数本の新しいシュートを伸ばす。2m近くなることもある。
昨年枝から短枝を伸ばし、その先に複数の蕾を付ける。蕾も真っ赤に見えるほど毛だらけ。萼は開くが花弁は開かない。花弁の色は白。授粉後、萼が閉じ、熟すころに再び開く。白から赤熟する。ナワシロイチゴと共通点が多い。
春先の新シュートを挿し木して栽培。今年は株が育ったおかげか、蕾がたくさん着いた。5月8日、開花。


カジイチゴ
浜名湖岸の荒れ地や、庭先の植栽によく見られる。浜名湖岸のものも、庭先からの逸出の可能性がありそう。キイチゴと呼ばれることもある。花物として扱うことがある。
木立性。3~7裂程度の艶のある大きな葉を着ける。ときに人の頭大ほどにもなる。棘はなく、春の新しいシュートは、うっすら赤い毛に覆われる。地下茎でよく増え、あちこちにワープする。踏み固められた通路などももろともせず、時に2mも彼方へ飛ぶ。飛んだ先では、とりあえず太さ1cm、高さ1m内外のシュートを出して様子を見る。このシュートが無事年を越すとそこを新たな拠点として、こんどは太さ2cm超の人の背を越えるような強烈なシュートを出すようになる。強健種だが、頑強さはない。ヤマノイモに絡まれれば、簡単にお辞儀してしまう。ツルマメに覆われると、著しく成長が落ちる。ネナシカズラに寄生されると、他の植物のように抵抗することもなく、食われるままに枯れこんでいく。
昨年枝から短枝を伸ばして、その先に複数咲く。花弁の色は白。無造作にくしゃくしゃの皺がある。授粉しても変化はなく、開きっぱなしの萼の底部がやがて盛り上がってくる。橙熟
実生を栽培してみると、播種翌々春には咲いて生るという成長の早さ。そのせいで、鉢植えでは成長がかなり制限されてしまう。花数は増えず、すぐに根が回り、やがて調子を落とす。現在は露地に下ろしている。花期は長く2月から咲いたりもするが、おおむね3~4月に開花し、5月ごろ熟す。ヒヨドリが先を争って食べに来ている今でもまだ咲き続けている。


クサイチゴ
クサイチゴの花 平地でもっともありふれた種。
木立性の低木。3~5出の羽状複葉。棘があり毛が生える。地下茎で増える。落葉樹だが、風当たりのないところでは葉を落とさない。一般に「野いちご」と呼ばれるものはこれ。
昨年枝から短枝を伸ばし、その先に複数咲く。花弁は白。おおむね4月頃に咲き、5月ごろ熟す。環境によっては、年明けから咲いている。赤熟。全体の大きさは平均的だが、個々の粒は小さいため数が多い。種子は多いが小さく、気にはなりにくい。香りにやや癖がある。
一昨年、道路わきで変わり種を見つけた。少し紅が差す花と、花弁が異様に細い花。除草剤等の影響の可能性もある。現在これら株は現存せず。


クマイチゴ
里山からスーパー林道など高地まで分布。林縁など、切り開かれた山地に多い。
木立性。3~5裂の単葉。裏表に毛が多い。全身に黒っぽい強靭な棘をもつ。地下茎で増える。背丈ほどにもなり、棘とあいまって、林業などでは迷惑種。
昨年枝から短枝を伸ばし、先に複数の花を着ける。花弁は白。花弁は小さく、正面から見ると背後の萼のほうが目立つ。クマバチがよく集っている。赤熟。
小苗を掘り取り栽培。鉢植えでは根が制限されるせいか、かなりコンパクトになる。それでいて花数は減らず比較的豊産。尖った形の粒が集まった、しっかりめの、味のよい実を着ける。適切な肥培を行えば栽培種としても良さそう。4月6日開花。


コジキイチゴ
里山林縁に生えるやや希少な種。
半蔓性。5~9出程度の羽状複葉。全身毛で覆われ、緑地の幹肌に赤黒い毛が密生する様子は特徴的。棘はしっかりして、他の樹木等に寄りかかり引っかかりながら育つ。地下茎では増えない。春に株元から1~2本の新シュートを出す。落葉樹だが、環境が許す場所では葉を保つ。
昨年枝から短枝を伸ばし、その先にたくさんの花を付ける。雌蕊が楕円形で飛び出した形状。花弁は白。花後はそのまま雌蕊が残り、熟す間際に色づきながら大きく膨らむ。橙熟。クサイチゴ程度に個々の粒は小さいながら全体は大きいため、種の数は多い。袋状になる。フクロイチゴの別名もある。コジキは甑からきたとの説もあり。
実生を栽培。鉢植えでは大きく育たず、ある年シュートを出さずに枯れてしまった。露地に下ろしたものは、2m程度まで伸びる。花数は非常に多い。4月5日開花。現在、先走った歪なものがひとつふたつ熟し始めたところ。


ナワシロイチゴ
田畑河川の土手など、水辺の日当たりによく見られる。
蔓性で、地に着いたところから発根する。3~5出の羽状複葉。棘があり、全体に白っぽい産毛で覆われ、とくに葉裏はくも毛で白い。地下茎で増える印象はない。
昨年枝より短枝を伸ばして、複数の蕾がまとまって着く。苗代を作るころに咲くとされる。サツキイチゴの別名がある。エビガライチゴと同様に花弁は開かない。花弁の色はピンク。授粉すると萼が閉じ、熟すころに再び開く。赤熟。
自然発生したところを、ときどき選択的に草取りをしてやったところ、勝手に繁茂した。4月23日開花。


ニガイチゴ
里山からスーパー林道など高地まで、路傍などにブッシュになっている。
木立性低木で、枝や葉裏が粉を吹いたように白っぽい。3裂気味の単葉。地下茎でも増えるが、比較的近場でこんもりと育つ。昨年枝の葉は丸く小ぶりなことが多く、春のシュートは大きく裂が深い。同株には見えないほど違うことがある。
昨年枝より新葉を2枚ほど出し1花着ける。個体によっては短枝を伸ばして2~3花着ける。さらには葉が大きいものはミヤマニガイチゴと分類する人もいるが、情報は錯綜しており不明。変種の範疇ということで、分ける必要性もあまりない。花弁は細長く鈍頭で、しわがある。授粉後は萼を閉じ、熟すころに再び開く。赤熟。タネが苦いことからニガイチゴの名が付いたというが、気にならない。
実生を栽培。鉢では大きくならないが、クマイチゴと同様に花数は減らない。3月15日開花。まだ熟さない。


バライチゴ(?)
昨年9月末、麻布山登山道で見つけたもの。本葉5枚ほどの苗が、あっという間にここまでに。つい先日まで10cmポットに植わっていた。


フユイチゴ
里山の湿り気のある林縁のいたるところに、這いつくばって茂る。スーパー林道へ向かうと、ある標高から上には生えない。
蔓性。まばらに小さなトゲを持つ。地下茎では増えず、地を這い、地に着いたところで根を張っていく。キイチゴ類はほとんど落葉樹だが、これは常緑。
真夏に白い花を着け、真冬に赤熟する。現在は新芽を伸ばしている最中。
適当な蔓を取ってきて植えていたが、鉢では手に負えず、どんどん逃げ出してしまって、現在は鉢置き場の下草になっている。


モミジイチゴ
細葉モミジイチゴ 栽培中のモミジイチゴ完熟 里山からスーパー林道、その周辺の山まで広く分布。もっとも繁茂している種かもしれない。野生の「キイチゴ」と呼ばれるものはこれ。
木立性。林縁など切り開かれて日当たりのいい場所に生える。3~5裂の単葉が多いが、無裂(キソイチゴ)、3裂(ナガバモミジイチゴ)、5裂(モミジイチゴ)などと呼び分けることがある。さらには魚の骨状だったりブドウの葉状だったりと、変異が大きい。棘は多い。地下茎で増える。
昨年枝より2葉程度と蕾を直接出し、下向きに咲く。短枝を伸ばして咲くもの、2花着けるものなども、まれにある。花弁は白。橙熟。
葉や花に特徴のある株を掘り取り、若しくは新シュートの挿し木で栽培。夏場の育て方で翌春の花が決まる。肥培しなくても花は着き易いが、実は生りづらい。香り、酸味、甘みが絶妙。今年の鉢植えは3月10日開花、5月2日に熟した。5月4日に登った熊伏山の登山口(約1000m)では満開過ぎ、中腹(1400m前後)では蕾が出たところだった。


雑種・カジモミジ
カジイチゴを母にモミジイチゴを父に雑種化したもの。現在2系統4株を栽培中。まもなく3年目に入る。未開花。


雑種・カジコジキ
カジイチゴを母にコジキイチゴを父に雑種化したもの。まもなく2年目に入る。両親の特徴を受け継ぎ、3出羽状複葉で、頂葉は3裂、側葉は2裂と、ボイセンベリー風の葉になっている。赤い毛が生え、棘がある。


雑種・コジキカジ
コジキイチゴを母にカジイチゴを父に雑種化したもの。一部、コジキイチゴ純粋種が出たようだが、基本的にカジコジキに同じ。


雑種・トヨラクサイチゴ
浜名湖畔の荒れ地で見つけたもの。別の湖畔路傍、三方原の松林下などでも見られる。カジイチゴとクサイチゴの雑種とされる。
木立性。まれにトゲがある。無裂~3裂の単葉、3出の羽状複葉、さらに頂葉の3出化、側葉の2出化、など変化が激しい。地下茎でよく増える。
昨年枝から短枝を伸ばして複数咲く。クサイチゴを大きくした雰囲気。花弁は白。花数は多い。実はほとんど生らず、生っても1果に数粒程度。赤熟。
浜名湖畔の吸枝を掘り取って栽培。4月8日開花。


雑種・ヒメカジイチゴ
カジモミジの花 カジモミジの実 畑の隅の植栽とも雑草とも付かない個体を見つけたもの。カジイチゴとニガイチゴの雑種とされる。
木立性。わずかに棘がある。3~5裂の単葉。葉裏は白くない。
昨年枝から短枝を伸ばし、複数の花を付ける。花弁は白。ニガイチゴの花を大きくした風。オオニガイチゴの別名がある。受粉すると萼が閉じ、熟すころに再び開く。赤橙熟。
見つけた個体の地際の折れた所から挿し木。花着き、実着きはあまりよくない。この実生に今春花が咲いた。小さいながら容姿はニガイチゴそのもの。ただ、花弁の先が割れている。
1枚目はカジモミジとして栽培していたもの(3月20日ごろ開花、後にヒメカジと断定)、2枚目は5月14日のその実。3枚目は当該株(4月12日開花)、3枚目は当該株の実生(4月8日開花)。


ブラックベリー・ソーンフリー
庭先に植えてあったらしく、草刈の残骸から拾ったものを挿し木。
株が育っておらず、木立性か蔓性かは判別できず。一般的な棘無しブラックベリーそのものの雰囲気。
花は薄ピンク。実は黒熟。今年は咲かなかった。


ブラックベリー・エバーグリーン
ネットでの頂き物。根洗い苗。キレハブラックベリー、カットリーフ・エバーグリーン・ブラックベリーなどとも。一般には、ソーンレス・エバーグリーンという棘無し種が出回る。
蔓性。非常に成長が早い。長い棘が大量。葉は鳥足状複葉で、各小葉はさらに細かく裂が入る。環境が許せば、冬季も葉が落ちない。
昨年枝より短枝を出し、薄ピンクの花を着ける。花弁にも不規則に裂が入ることがある。黒熟。5月8日開花。


ボイセンベリー
カレー屋でのもらいもの。
蔓性。成長は早くない。棘はない。葉は3出羽状複葉で、頂葉が3出羽状化、側葉が2裂することがある。
昨年枝より短枝を出し、白い花をお椀型に開く。授粉すると萼がやや閉じ気味になる。黒熟。
4月26日開花。現在未熟。


ラズベリー・インディアンサマー
ホームセンターで購入。赤実ラズベリーの銘。後にこの種であると確認を取る。
木立性。3~5出の羽状複葉。葉裏は白い。棘はほとんどないが、丈夫な毛がたくさん生える。
昨年枝より短枝を出して複数の花を付ける。花弁は白。花弁は小さく開かないが、ナワシロイチゴほど閉じてもいない。「前へ倣え」程度に開く。赤熟。2季生りで、今春のシュートの先にも秋には着く。
施肥してないせいか、大きくならない。その割には花も実もしっかり着ける。野生のキイチゴと比較して、香りが強く、種が大きい。生食では好みが分かれそう。4月中下旬に開花。


ラズベリー・ファールゴールド
インディアンサマーに同じ。赤色色素が抜けただけで、他の特徴は瓜二つ。
開花はワンテンポ遅れ、5月上旬に開花。やや病弱な感じ。橙熟。

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