取説(pdf)では端折っている部分があるので、星野撮影に関連しそうなあたりを調べ、性能については天文ガイドのT.G.Factory風(自称)にまとめてみた。
35mm換算f | 開放F |
---|---|
28 | 1.8 |
35 | 1.9 |
50 | 2.1 |
85 | 2.3 |
112 | 2.5 |
撮像素子は、1/1.7型、12Mpxの裏面照射型CMOS。OLYMPUS STYLUS XZ-2と同じモジュールらしい。
通常のズームのほか、ステップズーム機能もあり、28、35、50、85、112mmに切り替えられる。表は、その際の開放F値。
絞りは1/3段刻み。ND8(3段)相当のNDフィルタも搭載している。
シャッタースピードは、1/20000~250秒。ただし、設定モードによる制限が多い。
いただけない点もいくつかある。バルブ機能がない。インターバル撮影機能もない。
ノイズリダクションやダーク引き(ダークフレーム減算処理)は、撮影条件によって強制的に行われる。調整、無効化などの設定はない。
RAWデータはDNG形式。ダーク引き前の生データやダークフレームは取り出せない。
レンズ性能を見てみる。
なお、以降の焦点距離表示は、すべて35mm換算値とする。
ISO400 | ISO800 | ISO1600 | |
---|---|---|---|
28mm | F1.8 | F2.5 | F3.5 |
112mm | F2.5 | F3.5 |
露出時間は30秒。制限によりこれ以上延ばせないので、光量の差はISO設定で釣り合いを取る。
対象は、オリオン座上半身を中心とする範囲。
架台は、Vixen スーパーポラリス赤道儀で、自動ガイド。
最高解像度(12Mと呼称)の4000×3000pxのJPEG画像から切り出す。
仮に12MをA3に印刷した場合、短辺をはみ出し長辺に合わせるとして、1mmあたり9.52px、242dpiになる。切り出した範囲の長辺長は、約6.7cmに相当する。
絞り開放では、非点収差がよく判る。周辺星像はサジタル(サジッタル:sagittal)コマフレアが目立つ。よくある鳥が羽を広げた形。中心星像も、ハロのせいか、ふっくら見える。
一段絞ると、サジタル収差は見えなくなり、中心星像も引き締まる。ただし、2等星クラス以上では、絞り羽の回折による光条が見える。メリジオナル(メリディオナル:meridional)方向の収差は残る。
二段絞ると、周辺星像の収差がより小さくなっているように見えるが、敢えて絞りたいほどの効果は感じない。
周辺減光は、焦点距離にかかわらず目立たない。階調補正を強くかけると、四隅の切り取った部分の半分程度の範囲で、光量の落ち込みが感じられる。
絞りは1/3段ずつあり、せっかくの明るいレンズなのであまり絞りたくはない。ひと絞りでだいぶ画が変わっていたので、開放~ひと絞りまでを見てみた。
28mm、ISO3200、4秒固定撮影。12M画像の左下隅を切り取って並べてある。明るい星はカペラ。
開放でサジタル収差、ひと絞りで光条が見える。中間の絞りは、やはり中間的。
異形星像を避けたい場合には、2/3~1段ぐらい絞ったあたりが、明るさを保ちつつ星像も整いそう。
なお、少し星が流れて見えるが、これはメリジオナル収差と思われる。
日周運動は、上方向やや右寄りだが、元画像の中心星像は流れていない。
ISO設定による画質の変化などを見てみる。
ISO | ダーク引きされる 最小露出時間(秒) | 最大露出時間(秒) |
---|---|---|
12800 | - | 1 |
6400 | - | 2 |
3200 | 5 | 30 |
1600 | 5 | 30 |
800 | 5 | 30 |
400 | ※注 10 | 30 |
200 | ※注 10 | 30 |
100 | ※注 10 | 30 |
80 | ※注 10 | 250 |
通常使える感度は、ISO80およびISO100からは倍々でISO12800まで。それぞれには許される露出時間がある。
また長時間露光時には、強制的にダーク引きが行われる。その最小露出時間も記しておく。素子の問題なので、F値やNDフィルタの有無は関与しない。
一定以上の感度、露出時間で撮影した場合、ダーク画像取得時間が余計にかかる。
たとえばISO3200で4秒露出した場合、1秒とおかずに次のコマを撮影開始できる。ところが5秒露出すると、次のコマに移るのに6秒ぐらい(ダーク画像撮影時間+α)かかってしまう。
仮に30秒露出したとすると、1分に1枚撮ることができない。250秒露出は試してないが、同じ処理なら4分以上何もできないことになる。
2017/5/19 追記:
250秒露出では、やはり250秒のダークマスク撮影時間が追加される。
低ノイズ、高感度(対フィルム)なISO80でたっぷり露光、は美味しいモードではあるのだが、1時間に7枚しか撮れないのは厳しい。
※注 2018/5/23追記:
ISO80、8秒露出などでは、通常はダーク引きされない。が、される場合もある。温度等を測っているのでは、と想像するが判断基準は不明。
この場合、ISO800などと同様になり、4秒まではダーク引き無し、5秒以上で行われる。
※注 2020/8/10追記:
蒸し暑い薄明の明け方、ISO400、8秒露出で撮っていたところ、初めはダーク引きされなかったのだが、露出オーバー表示になった数枚後からされるようになった。
日が昇ったわけでもなく気温変化は感じられない。撮影データの一部を監視しているのだろうか。単に、動作によりカメラ本体の温度が上がったのかもしれないが。
112mmF2.5にて、オリオン座下半身あたりを撮影。Bloggerでは1600px超は縮小されてしまうので、12M JPEGから1600px分をトリミングした。
最後の2枚は、今回撮ったうちの両極端の、RAW画像からの切り出し。ISOを変えていくと、リニアにノイズの量も変わっていく。
高感度域では、背景に大きな赤い斑が発生している。微恒星は溶けて無くなっている。RAWに見られる激しいノイズを抑えているわけで無理もない。景色を撮ってみても、色むら、細部の潰れがよく判る。
ISO3200まで下げると、斑は落ち着いてくるが微恒星は相変わらず。ISO1600で星数が増える。NGC2024(三ツ星の左上)の暗黒星雲が辛うじて確認できるようになる。
ISO800ではさらに星数が増える。ISO400では星数は変わらないが、背景に巣食う暗黒星雲っぽいノイズが減る。M42も滑らかになり、黒点ノイズもほぼ無くなる。
RAWのISO400は、それなりに見れる。ISO1600などの高感度フィルムをルーペで見るとこんな雰囲気。トリミング範囲外だが、M78も確認できた。
星数の増えるISO800ないし400あたりで枚数を稼いで、コンポジット後に強めの処理を掛けたら、結構見られる画が撮れそうな気がする。
偽色テストをしてみる。
上の各種テストを見ても、けっこう星の色が判る。さてそれは本物か、調べてみた。
ISO1600、F2.5、5秒露出、固定撮影で、ガーネットスター(ケフェウス座μ)近辺を撮ってみた。28mmでは中央やや下、112mmは中央より左下の明るいのがそれ。
12MのRAWおよび高精細JPEG画像から、中央1600px分をトリミングしている。
28mmは1分おき、112mmは15秒おきに撮影し、4枚分をYimgで比較明合成(「最大」コンポジット)した。
天ガのテストでは彩度を上げているらしいが、上げても変化が感じられなかったので処理してない。
RAWで見ると、高感度なので背景ノイズが多い。かなり明るい星以外は、色が変わりまくり。色の判別は不可能。
JPEGでは、背景ノイズはかなり抑えられ、ぬか星たちの偽色も抑えられている。ところが、明るい星に妙な色が着いている。
28mmJPEGでは、まさに柘榴石のごとく、ガーネットスターが赤から緑まで変化している。RAWではオレンジ色でほぼ安定。
112mmJPEGでは、ガーネットスターは安定しているものの、それに次ぐ明るさの星で似たような変化が見える。
どうもJPEG画像の「色」は、癖があるらしい。ぬか星なら色は抜かれ、輝星ならちゃんと色が出る。その間では、激しい偽色が出ることがある。
JPEGのこの癖は、少々悩ましい。
ピント合わせについても確認してみる。
いままでに扱ったデジカメ、一眼レフレンズなどには「∞」というピント位置があった。
フォーカスリングをいっぱいまで回すとか、選択肢で選ぶとか、ともかく再現性高く容易に合わせられるようになっていた。
EX-10でも、マニュアルフォーカスのインジケータ右端が∞となっている。が、じつは∞ではない。ピント∞という選択肢もない。
28mmは、F1.8、ISO400、30秒露出。オリオン座付近。
フォーカスを、∞いっぱい、∞-6クリック、∞-12クリックで撮影し、トリミングして、上から順にタイリングした。
以前の記事でピンボケだと思っていたものは、それほどボケてなかったらしい。
112mmはF2.5。ISO1600、5秒露出。ガーネットスター付近。
∞いっぱい、∞-9クリック、∞-18クリックで撮影。40秒間隔で撮り、比較明合成したもの。
いずれのfでも、フォーカス∞端では赤系の滲みが見え、サジタル方向の収差が大きくなる。
フォーカス手前側では、緑系が見え、メリジオナル方向が主となる。
MFでフォーカスをいじると、中央部分が強拡大されて、ピント合わせをサポートしてくれる。2等星ぐらいの明るさがあれば、ピント具合は判る。
フォーカス可動範囲内にピントがあるので、合わせることは可能だが、この件はマニュアルには書いてない。
個体差なのか不具合なのか設計上の仕様なのか。いつか確認してみたいと思う。
ついでなので、タルタルテストもしてみる。
以前使った方眼パネルの全体が写るように距離を調整し、オートフォーカスで撮った。
タルタルテスト結果
単純に「真ん中のいいところ」を使っているのかと思ったが、そうではないらしい。像面補正を掛けた上で切り出している。
28mmは、樽型の歪曲収差がよく判る。RAWとJPEGとを見比べると、だいぶ修正されている。
112mmでは、ごく僅かな樽型収差が見える。JPEGの補正を見ると、さらに樽型に補正している……と思ったらちょっと違う。
よくよく見ると、中心はやや拡大、中心から2.5cm目盛りあたりがもっとも周辺に動き、さらに2.5cmあたりの四隅は動かない。
陣笠型収差があり、弱い樽型に修正しているのではないかと想像する。
ちなみに、28mm、112mmともに、四隅ではピントが合ってない。多少の像面湾曲もあるらしい。
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