浜松市北区滝沢町に「石切り場」と呼ばれるところがある。
遠目に眺めると、送電鉄塔とNo.4風車との間。風車のある尾根道をいくと、鉄塔を過ぎてから北側へやや寄り標高を下げるが、この採石場を迂回するためのようだ。
滝沢小学校南方のセコ道の入り口に、および第二東名現場脇に鷲沢風穴の案内板とともに、「石切り場」への案内がある。車一台がやっとの道を行くと、石切り場への入り口にも看板がある。駐車場はないが、この入口へ突っ込んで停めれば邪魔にはならない。ここには封鎖用のポールはあるものの開放されている。もっとも、すぐに車は通れない幅になるので、そう先には進めない。
そしてごく普通の山道に。腐ってぶかぶかする木の橋を渡り、ところどころに覆いかぶさる倒木を避けてゆく。
やがて住友セメント(株)の看板のかかる、鉄条網の巻かれたバラックにたどり着く。中には、タンクが立っており、コンクリートで頑丈な基礎様のものが作ってある。三隅にはコンクリートで階段が付けてある。工場のような大きな建物ではなく、休憩所のような雰囲気でもない。
そのすぐ先には、鉄製の橋が架かる。完全に錆びていて、片方の手すりは落ち、足元の鉄板はボコボコと音を立てるほどに浮いている。そこから北を望むと、わずかに採石場らしきものが見えた。鉄製橋下は、採石場の唯一の排水路のよう。橋ををくぐればその床部へ行けそうだが、猛烈に茂った潅木らが行く手を遮る。無理に行っても何も見えなさそう。橋を渡ってから右手へ上れば、採石場の中腹へ出られ、ごっそりえぐられたその一部が見える。
そこそこの規模の採石場なのに、運び出す車道らしきものがない。また、立須下の露岩部と比較すると、崖にも植物が生え、床部に至っては完全に木々に覆われていて、はるかに時間の経っている雰囲気を感じる。昭和中期以前から放置されていたのではないだろうか。
採石場を過ぎたあたりには、フウトウカズラが繁茂。そして雌株を発見。赤く色づいた実を見ることができた。手の届いた、やや若い朱色の粒を噛みしめてみると、すこし時間を置いて刺激のある不快臭に襲われた。吐き出すも後を引く。何度も吐き出して落ち着いたころ、ふと遠くにコショウの風味を感じた。近縁ということもあり、クロモジとニッケイぐらいには近いのかもしれない。美化しすぎの喩えだが。
さらに行くと、やがて送電鉄塔の足元をかすめて、No.3風車あたりで尾根道すぐ脇を平行に進むようになる。最終的にはNo.1風車あたりまで続くようだが、通りへ上がってしまった方が歩きやすい。
ここへ着くまでに、下手なリコーダーの音がずっと聞こえていた。着いてみると、猪撃ちと思しき人が犬笛を吹いているのだった。笛を吹き、時に名を呼ぶが返事はない。ここへ来るまでに犬を見なかったか、と聞かれた。車へ引き返す道でもずっと鳴っていた。あれから愛犬は戻ってきたのだろうか。
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